243号特集 全国研究集会
□ 243号特集 全国研究集会
平成22年度総会の概要について 【p.1-5】
平成22年度全国研究集会の概要について 【p.6-11】
オープニング講演:レファレンスツール~この40年とこれから~ 【 p.12-16 】
大高利夫(日外アソシエーツ株式会社 代表取締役)
情報を探す、あるいは情報の在処を探すツール作りを仕事として40年が経ちました。その間のレファレンスツールの変遷、媒体の変化、主要な利用者である図書館の推移などと、これから先はどうなっていくのだろうかを、体験と私見を交えてお話ししたいと思います。
基調講演:近代製鉄と資料保存 【 p.17-21 】
松岡資明(日本経済新聞社編集局文化部編集委員)
日本独特のたたら製鉄から高炉による洋式製鉄へ。近代日本を支えたのは鉄の国産化であった。しかし、近代製鉄の歴史はこれまで、断片的にしか語られてこなかった。国産化への道を切り拓いたのは明治政府の中枢にあった薩長閥とは無縁の政治家や民間人だったからである。それら、鉄の国産化に情熱を燃やした技術者、企業家、政治家たちの姿を通して日本近代製鉄の歴史を語り、記録資料(アーカイブズ)の重要性を浮き彫りにしたい。
第1分科会:企業図書館は今
1.図書と知識経営・知識活用のための図書・情報サービスのあり方 【 p.22-25 】
中山章子(富士フイルム株式会社 R&D統括本部知的財産本部知財業務グループ)
R&Dの知識経営・知識活用に役立てるための技術情報提供、支援を行うサービスの一環として捉え、情報サービス全体を統合的に考え、検討したことを述べる。図書館が組織にとって不可欠な機能をもつことが求められているし、企業にとって必要な情報資源の蓄積があり、その蓄積がされることで、図書・情報サービスがおこなわれるはずである。弊社の図書運営では、検討途上でもあり、あくまで図書サービスへの変革提言としたい。
第1分科会:企業図書館は今
2.ナレッジサービスへの展開 【 p.26-30 】
柊純子、三好俊一(NRIワークプレイスサービス株式会社 ナレッジサービスチーム(株式会社野村総合研究所 ライブラリー担当))
野村総合研究所のライブラリーは、創立以来、さまざまな調査や企画に不可欠の役割を果たしてきたが、近年、ライブラリーサービス以外に、ライブラリーに蓄積されたナレッジを活かして、高付加価値のナレッジサービスへと展開してきている。まず、散在した情報源をナビゲートするために、1998年にウェッブポータルを構築した。また、調査や企画をより効率化するために、2002年に1件ごとに有料のリサーチサービスを開始した。これらの3種のサービスは相互に深く関係づけられ、スタッフの能力向上と相まって、良いシナジー効果を生み出している。
Section 1: Strategic Planning and Management in Corporate Libraries
2.The Evolution of Library Services into Knowledge Creation – A Case study of Library 2.0 - 【 p.26-30 】
(By Junko Hiiragi & Shunichi Miyoshi, NRI Workplace Services,Ltd.)
The library of Nomura Research Institute has played an indispensable role in serving a variety of business research and planning since its inception.
In recent years, it has been extending its service to knowledge creation besides a library service, making most use of accumulated knowledge in the library.
A web portal service was developed in 1998 to navigate scattered information resources.
A pay-as-you-go research service was launched in 2002 to make research and planning more efficient.
These three categories of service are highly-interrelated to produce good synergy effects coupled with the improvement of staff.
第2分科会:アーカイブズ学へのいざない
1.大学院アーカイブズ学教育への挑戦 【 p.31-34 】
保坂裕興(学習院大学 教授)
日本のアーカイブズは、館数で比較すると博物館や図書館の約20分の1の規模であり、成長途上にある。学習院大学大学院アーカイブズ学専攻はこれを打開すべく2008年4月に開設された日本初の大学院教育課程である。前期課程修了者は「修士(アーカイブズ学)」、後期課程修了者は「博士(アーカイブズ学)」の学位が取得できる。個々の記録資料群への取り組み、その環境づくり、使命・責務について研究をすすめ、試行錯誤を重ねていくことが必要である。
第2分科会:アーカイブズ学へのいざない
2.アーカイブズ・カレッジとアーカイブズ学教育 【 p.35-39 】
渡辺浩一(国文学研究資料館 教授)
この報告では、国文学研究資料館で行われているアーカイブズ・カレッジについて専門的な司書の方々に紹介した。ここでは、2007年カリキュラム大改訂により内容が歴史アーカイブズ中心から現代アーカイブズ中心に変化したことを述べた。それに加えて日本全体で行われているアーカイブズ学教育全体のなかで、アーカイブズ・カレッジが正規の大学院教育の補完、および非行政アーキビスト現職者の研修と位置づけられることを示した。
第2分科会:アーカイブズ学へのいざない
3.記録管理学会の教育と研修 【 p.40-44 】
小川千代子(記録管理学会 副会長/国際資料研究所)
記録管理学会は発足以来20年余り。記録管理者の教育と研修は、この学会設立の趣旨の一つであるこれまでの活動状況を、学会としての取り組み、会員の研究動向、研究大会のテーマ、プロジェクト成果に注目して考察し、今後への期待と専門家名称翻訳の切望を述べる。
第3分科会:私立図書館の運営
1.『図書館の設置及び運営上の望ましい基準』と私立図書館 【 p.45-50 】
藤田節子(専門図書館協議会私立図書館小委員会委員:川村学園女子大学教育学部教授)
新たに策定される『図書館の設置及び運営上の望ましい基準』は、ノーサポート・ノーコントロールの原則で、自律的活動を行っている私立図書館にとって、事業体制を整備するための指針として利用できるであろう。
Section 3: Management of a Private Library
1.”Desirable Standards for the Establishment and Operation of Libraries” and Private Libraries 【 p.45-50 】
(By Setsuko Fujita: Kawamura Gakuen Woman’s University, Faculty of Education )
“Desirable Standards for the Establishment and Operation of Libraries” will be newly established this fall. This standards will be applied to private libraries that is founded by public interest corporation, and that offer library materials for the utilization of the general public. Under the provisions of Library Law,the State and local public bodies shall not interfere with the work of any private library or give any subsidy. However, the standards will serve as a guideline for creating rules of establishment and operation of private libraries.
第3分科会:私立図書館の運営
2.農文協図書館(農林水産専門図書館)の歩みと経営の現況 【 p.51-53 】
本谷英基(財団法人農文協図書館 事務局長)
農文協図書館はどのような意図によって設立されたのか。その自立性は、収益部門で、株式や債券などに頼らず、建物の一部を賃貸することによって保障されている。その実情を公開する。その他、蔵書の現況と利用状況、外部「ライブリアン」による評価などについて触れる。
第4分科会:専門図書館の著作権
1.著作権法改正~国立国会図書館の資料電子化と障害者サービスを中心に~ 【 p.54-57 】
南亮一(国立国会図書館)
本稿では、2009年著作権法改正のうち、図書館業務に関係する箇所の改正箇所を、国立国会図書館の資料電子化(第31条第2項の新設)及び障害者サービス(第37条第3項及び第37条の2の全面改正)を中心に解説するものである。
第4分科会:専門図書館の著作権
2.著作権の制限~一般的権利制限規定とフェア・ユース~ 【 p.58-62 】
奥邨弘司(神奈川大学経営学部准教授)
現在、著作権を一般的に制限する規定の導入の是非が論じられている。本稿では、その議論の状況を紹介すると共に、米国フェア・ユース規定の実際にも触れた上で、一般的権利制限規定を含む権利制限規定のあり方についての考察を行う。
第4分科会:専門図書館の著作権
3.専門図書館協議会著作権委員会の活動-専図協ホームページの改定とアンケート自由記述への回答 【 p.63-64 】
時実象一(専門図書館協議会著作権委員会委員長:愛知大学教授)
専門図書館協議会著作権委員会では 2007年度 (2008年1月) に著作権に関するアンケート調査をおこなった。その結果は2008年全国研究集会で発表している。このアンケートではいくつかの自由記述項目が設けられていたおり、これには多くの質問や意見が寄せられていた。そのうち「専門図書館と著作権 Q&A 2002年版」ですでに回答されているものについてはその旨の回答を作成し、当協議会の「著作権コーナー」に掲載した。
また Q&Aで回答されていない質問等については、新たに回答を作成し、Q&Aを補足する方向で検討中である。
第5分科会:味の老舗のビジネス・アーカイブズ
1.虎屋のアーカイブズ~歴史を伝え、活用する~ 【 p.65-70 】
青木直己(株式会社虎屋 虎屋文庫)
虎屋は室町時代後期に創業した和菓子屋で、長年にわたり京都で皇室の御用を勤めてきた。明治維新による東京遷都の折、京都店はそのままに東京へも進出している。その虎屋でアーカイブズ機能を担っているのが虎屋文庫である。
今回は前近代から現代にいたる所蔵史料をどのように業務に利用しているかを紹介する。また、同時に企業アーカイブズと企業活動との関わりについての事例についても触れたい。
第5分科会:味の老舗のビジネス・アーカイブズ
2.月桂冠のアーカイブス~月桂冠373年の歴史より~ 【 p.71-75 】
木戸公司(月桂冠株式会社 広報室)
当社は日本酒の製造・販売企業で創業370年余の歴史があります。その当社の歴史を綴った社史編纂の基本的な考え方と編纂プロセスについて、紹介をさせていただくとともに、酒のミュージアムである大倉記念館のビジネス的要素と地元地域での存在意義、ならびに現在抱えている課題や今後の記念館の方向性やあり方について述べさせていただきます。
第5分科会:味の老舗のビジネス・アーカイブズ
3.中村屋のアーカイブズ~過去に学び、未来を拓く~ 【 p.76-80 】
村上正人(株式会社中村屋 CSR推進室 課長)
中村屋ではアーカイブズを企業価値向上のツールとして活用することを目指している。今回は中村屋のアーカイブズの中で活用法に焦点を絞り、①社史編纂②HP活用③周年事業④社史講習会の4例を紹介する。
第6分科会:ユーザーへのアプローチ
1.うごく 出会う つくる ライブラリー 【 p.81-83 】
長田美智代(株式会社博報堂 研究開発局)
2008年春、赤坂への本社移転に伴い、新しく生まれ変わったライブラリー。全社移転コンセプトである「うごく 出会う つくる」をベースとして作り上げられた博報堂ライブラリーの概略をご紹介させて頂きます。
第6分科会:ユーザーへのアプローチ
2.新たなアプローチ~全国図書館大会U40プレミアセッションの試み~ 【 p.84-87 】
稲場雅子(社団法人日本図書館協会資料室)
2009年10月30日、東京・神保町にて開催された第95回全国図書館大会の関連行事として、U40プレミアセッションは開催された。「次の時代の図書館を担う40歳前の図書館関係者のための交流集会」として、業種・館種・職種を問わずいろいろな人と交流し、明るい笑顔で図書館の夢を語ろうという趣旨だった。U40の活動で最も注目されたのは、そのアプローチの方法だ。事務局メンバーが全国各地に散らばっていたため、様々なWebサービスを活用して広報を行った。今回の発表ではU40で活用したWebサービスを紹介する。
第6分科会:ユーザーへのアプローチ
3.議員サービスの最前線-汗を流し、足で稼ぐ議事堂内図書館 【 p.88-92 】
塚田洋(国立国会図書館国会分館)
国立国会図書館国会分館は、議事堂内という立地の良さを活かし、国会議員、議員秘書等に最新の資料・情報を提供している。「汗を流し、足で稼ぐ」という国会分館の基本姿勢に基づく最近のサービス改善の取組を紹介する。
平成22年度全国研究集会に参加して 【 p.93-103 】
第1分科会を中心に/出水晶(株式会社東レシステムセンター 情報調査室)
第2分科会を中心に/植田知明(農林水産省図書館)
第3分科会を中心に/飯田祐史(財団法人味の素食の文化センター)
第4分科会を中心に/池田美佐子(一般社団法人日本自動車工業会 自動車図書館
第5分科会を中心に/山﨑美和(凸版印刷株式会社 印刷博物館)
第6分科会を中心に/野本真紀子(独立行政法人日本貿易振興機構 貿易投資相談センター ビジネスライブラリー)
事務局だより【p.104-106】