263号特集 図書館の多彩な利用者支援活動

特集「図書館の多彩な利用者支援活動」にあたり 【p.1】
利用者支援モデルと情報専門職の役割 【 p.2-9 】

齋藤 泰則(明治大学文学部教授)
図書館が扱う情報源は、専門家を著者(author)とする情報源であるという点で特定主題領域に
おける知の典拠(cognitive authority)としての機能を有するものである。インターネット上の情
報源の多くはこの知の典拠としての資格を有していないがゆえに、図書館の情報源は信頼性の高
い情報を提供するきわめて重要な情報源として位置付けられる。今日の情報専門職には、こうし
た知の典拠を有する情報源に関する書誌的知識を基盤に利用者に案内・紹介する役割が期待され
ている。
情報専門職による利用者支援については、情報探索を中心に利用者が獲得すべき知識やスキル
の種類と内容を体系化し、それに基づいて支援を行うコンテンツ志向モデルと、利用者の問題解
決プロセスのなかに情報探索に関する知識やスキルを組み込んで支援するプロセス志向モデルが
存在する。利用者支援にあたっては、後者のプロセス志向モデルに依拠した内容と方法の導入が
重要である。

東京大学の学習支援:学術情報リテラシー担当の活動から 【 p.10-16 】

成澤 めぐみ(東京大学情報システム部情報基盤課学術情報チーム)
東京大学における学習支援活動(学術情報リテラシー教育、研究支援、教育支援、各種講習会、
資料作成等)について、学内の担当部署である情報基盤課学術情報チーム内・学術情報リテラシ
ー担当による実際の取り組みを紹介する。学内オープンで行う「テーマ別ガイダンス」、教員や
学内他部局等との連携による「オーダーメイド講習会」「共催講習会」など、年間170回以上開催
する様々な講習会の策定や運営等について述べ、併せて学習支援等のためのポータルサイトや支
援資料作成、広報活動等にも触れる。
また講習会で扱うツールや利用者の変化なども含めて、今後の学習支援活動の方向性について
も展望する。

東京厚生年金病院図書室での看護師を対象とした文献検索講習会
―事前レポートを取り入れた参加型講義を行って― 【 p.17-24 】

山田 有希子(東京厚生年金病院図書室)
病院図書室で行っている利用者教育を紹介する。特に、職員の半数を占める看護師向けに年に
1 回開催している文献検索講習会についての報告である。病院というスペースや機材が限られて
いる状況で参加型の講義にするために、疑問に思った事柄からキーワードを抽出する事前レポー
トを取り入れている。講習会では、そのキーワードに基づいたいろいろなデータベースでの検索
を体感してもらい、病院図書室司書はそのサポートができることを知ってもらう。終了後のアン
ケートでは満足の結果が多く、今後も当院看護師のニーズにあった講習会を継続していきたい。

循環型の支援活動を目指して 【 p.25-30 】

鴨川 弥生(独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター図書室)
独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(CDB)は、「発生」のメカニズ
ムを解明し、「再生」医療の科学的基盤を築くことを目的として、神戸市のポートアイランドに
設立されたセンターです。職業として学術的な研究を行うという組織の特性から、在籍者は図書
館を使い慣れているため、CDB図書室では「利用者支援」として、「図書室の使い方指南」では
なく「いかに利用者が必要とするものを提供できるか」という点に重きを置いています。
そうした日々の取り組みの中から、近年成果のあった「外国人研究者のための日本語学習用資
料の購入」および「図書室で購入する資料を選書するための図書の展示会」について、利用者の
要望を受けた発端から実施に至った経緯、その結果までをまとめました。
小さな図書室の小さな取り組みですが、ご参考になれば幸いです。

生徒の素朴な質問に応えるには~学校図書館の利用者支援活動 【 p.31-37 】

野村 愛子(田園調布学園中等部・高等部 司書)
学校図書館の利用者は、生徒と教員であり、その目的は、「学校の教育課程の展開に寄与する
とともに、児童又は生徒の健全な教養を育成する」ことであると学校図書館法によって規定され
ている。
また、学校図書館には「読書センター」「学習・情報センター」としての機能がある。本校図
書館も生徒数約1,200名、教職員約100名に対し、授業をはじめとする様々な教育活動に、資料や
その場が活用されるよう、適切な支援ができるよう工夫している。本稿では生徒の素朴な3 つの
質問を中心に利用者支援活動を具体的に示した。「何かおもしろい本ない?」にはテーマ展示で、
「どうやって調べたらいいの?」には、調べ学習をする授業の中で、本の探し方、参考文献の書
き方の話をすることで、「場所を使いたい!」では掲示場所やグループで集まれる場の提供をす
ることで、支援している。

ごぞんじですか? 第90回
パスファインダー作成ツール、LibGuidesのご紹介 【 p.38-42 】

佐藤 嘉能(プロクエスト日本支社 アカウントマネージャー)

専門図書館を見る 第212回
内藤記念くすり博物館 【 p.43-47 】

筒井 久美子(公益財団法人名古屋まちづくり公社名古屋都市センターまちづくりライブラリー)

私の仕事、わたしの一日 第14回
つながろう:関西アメリカンセンターの学生交流プログラム
 【 p.48-49 】

西部 由美(関西アメリカンセンター・レファレンス資料室)

コレクション紹介 第3回
ヴィクトリア朝の子どもの本:イングラムコレクションより 【 p.50-51 】

大貫 朋恵(国立国会図書館国際子ども図書館 児童サービス課)
髙宮 光江(国立国会図書館国際子ども図書館 児童サービス課)

資料紹介
現代日本の図書館構想:戦後改革とその展開 【 p.52-53 】

田村靖広(後藤・安田記念東京都市研究所市政専門図書館)

図書館のしごと よりよい利用をサポートするために 【 p.53-54 】

竹内ひとみ(国立国会図書館)

【IFLA2013参加報告】ライブラリー@動くシンガポール【 p.55-57 】

青木 玲子((独)国立女性教育会館客員研究員)

専図協一元化の検討状況報告(2)【 p.58-60 】
事務局だより 【 p.61-62 】