2023/12/25 令和5年(2023年)著作権法の改正について

2023年6月に著作権法を改正する法律(令和5年法律第33号)が可決成立しました1)。今回の改正のポイントは次の3点です。
① 集中管理されていない著作物について、利用のための手続きを簡素化し、利用を円滑にする2)
② デジタル化のメリットを生かすため、司法又は行政の目的のための著作物の公衆送信を可能にする
③ 著作権等の侵害に対する損害賠償額の算定を合理化する3)

このうち②は、地方議会図書室や行政・司法の手続を行う企業の図書館等、専門図書館の業務に係ります。施行日は2024年1月1日ですので、施行が間近に迫る②についてその概要をご紹介します。

【現行法】
裁判手続や行政手続、行政審査手続のために、その必要と認められる限度において著作権者の許諾なく著作物の複製をすることができます(著作権法第42条)。一方、クラウド保存やメール送信等の公衆送信には著作権者の許諾が必要です。

【改正法】
現行法の複製で認められる同じ範囲において、著作権者の利益を不当に害しない場合、著作権者の許諾なく公衆送信が可能となります。
具体例として、裁判や行政審判の手続(改正著作権法第41条の2)、立法又は行政の目的のための内部資料のやり取り(同第42条柱書)、行政(産業財産権、品種、特定農産物、薬事等)による審査手続等(同第42条の2)が挙げられます。

1) 『著作権法の一部を改正する法律の概要』、文化庁 (2023)
URL: PDFファイル

2) ①の施行は公布日(2023年5月26日)から3年以内とされていて、これから具体的な制度設計が行われます。

3) ③の施行は、②と同じく2024年1月1日です。

改正後の条文を以下に添付します。ご不明な点等ございましたら『お問い合わせ』からお知らせください。

(裁判手続等における複製等)
第四十一条の二
著作物は、裁判手続及び行政審判手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部 数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 著作物は、特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)その他政令で定める法律の規定による行政審判手続であつて、電磁的記録を用いて行い、又は映像若しくは音声の送受信を伴つて行うもののために必要と認められる限度において、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項、 次条及び第四十二条の二第二項において同じ。)を行い、又は受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(立法又は行政の目的のための内部資料としての複製等)
第四十二条 
著作物は、立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製し、又は当該内部資料を利用する者との間で公衆送信を行い、若しくは受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及びその複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(審査等の手続における複製等)
第四十二条の二
著作物は、次に掲げる手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願(特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(昭和五十三年法律第三十号)第二条に規定する国際出願をいう。)に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続
二 行政庁の行う品種(種苗法(平成十年法律第八十三号)第二条第二項に規定する品種をいう。)に関する審査又は登録品種(同法第二十条第一項に規定する登録品種をいう。)に関する調査に関する手続
三 行政庁の行う特定農林水産物等(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号)第二条第二項に規定する特定農林水産物等をいう。以下この号において同じ。)についての同法第六条の登録又は外国の特定農林水産物等についての同法第二十三条第一項の指定に関する手続
四 行政庁若しくは独立行政法人の行う薬事(医療機器(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第四項に規定する医療機器をいう。)及び再生医療等製品(同条第九項に規定する再生医療等製品をいう。)に関する事項を含む。以下この号において同じ。)に関する審査若しくは調査又は行政庁若しくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続
五 前各号に掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める手続
2 著作物は、電磁的記録を用いて行い、又は映像若しくは音声の送受信を伴つて行う前項各号に掲げる手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、公衆送信を行い、又は受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(裁判手続における公衆送信等)
第四十二条の三
著作物は、民事訴訟法(平成八年法律第百九号。他の法律において準用し、又はその例による場合を含む。)の規定により電磁的記録を用いて行い、又は映像若しくは音声の送受信を伴つて行う裁判手続のために必要と認められる限度において、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行い、又は受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。