専門図書館318号(2024年9月)特集:図書館のイメージ戦略(詳細)

特集:図書館のイメージ戦略【p1】
行動変容を実現するメディア活用戦略モデル
―専門図書館に注目して―【p2-6】
河井 孝仁(東海大学文化社会学部広報メディア学科客員教授)
専門図書館において期待する対象者に期待する行動を実現するためには、単に「イメージ」を示すだけでは不十分である。行動変容を達成するためのメディア活用戦略モデルを、前の傾聴・認知獲得・関心惹起・探索誘導・着地点整備(信頼供給)・着地点整備(共感形成)・行動促進・情報共有支援・後の傾聴の各フェイズを逐次、的確に行うことによって、期待する対象者に期待する行動を実現できる。このことについて、各フェイズの留意点を示しつつ、また具体的な提起をすることで明らかにした。
アジア経済研究所と図書館の情報発信
―webサイトとSNSを中心に―【p7-12】
今満 亨崇(日本貿易振興機構アジア経済研究所学術情報センター)
日本貿易振興機構アジア経済研究所では2018年度以降、web上での情報発信改革を行ってきた。webサイトでは画像を中心とするデザインを導入し、既存のページを整理し、「IDEスクエア」や「ライブラリアン・コラム」を開始した。これら新規コンテンツは着実に成長して多くのアクセス数を獲得している。SNSでは機械投稿から、職員が文章を考えて投稿する運用に変更した。さらにOGPタグを設定するなどして、より多くのインプレッションやエンゲージメントが得られるようになった。
図書館らしさ」からの脱却
固定観念・先入観・イメージから抜け出そう【p13-18】
武田 小百合、田名部 晃平、加藤 舞(東北大学附属図書館)
東北大学附属図書館では、従来の大学図書館のイメージにとらわれない広報活動を通して、学生や図書館に興味がない層にも広くアプローチしてきた。本稿ではその具体的な事例として、企画展の斬新なデザインや、地元キャラクターとのコラボ企画、ゆっくり解説動画を用いたSNS発信、Z世代をターゲットとしたPRムービー制作、研究教育への活用を前提としたデジタルアーカイブを紹介するとともに、大学図書館の認知度や価値向上のために職員一人ひとりができることについて考察する。
図書館の景観を整備する取り組み【p19-24】
森谷 芳浩(神奈川県立図書館)
神奈川県立図書館は、現在、建物の新築、改修を伴う再整備を行っている。この再整備にあたって、目指すべき県立図書館像を掲げており、そのひとつが「魅せる図書館」の機能である。これは建築家・前川國男氏が設計した旧本館(現・前川國男館)の建築的な魅力を生かすもので、人を惹きつけ、人が訪れる、魅力ある図書館になることを目標としている。図書館周辺には同じく前川氏設計の建築があり、エリア全体として、竣工当時の姿と風情を再現する景観改善工事も行っている。旧本館(現・前川國男館)は2021年に県指定重要文化財になった。図書館の建物が歴史的な価値を持ち、景観の一部として定着することで、図書館が長く安定して活動することをイメージ化させるねらいもある。
アカデミック・リソース・ガイド(arg)のイメージ戦略
15年間の実践の当事者による中間報告【p25-28】
岡本 真(アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg))
図書館のデザインとプロデュースを手掛けるアカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)が創業以来の15年間で意識して実践してきたイメージ戦略を中間報告として開示する。具体的にはargのコーポレートビジョンである「学問を生かす社会へ」を具象化するために図っている2つのメディア展開を詳述する。以上を前提としつつ、企業のイメージ戦略以前の大前提として、argの前身・原型・原点であるメールマガジンACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)で一貫して重視してきた情報の透明性・公開性を重んじることが、結果的には企業等の主体の利得につながることを説く。
図書館のイメージ?【p29-35】
廣木 響平(株式会社図書館総合研究所 代表取締役 社長)
全国の図書館の構想・計画策定を支援する図書館総合研究所がこれまで業務を行う中で、考えてきたことや図書館のイメージの変遷について記載する。人々が集まる美しい図書館、多機能と融合する複合図書館、機能自体が拡張する図書館、と図書館のあり方が変容していく中で、現代の図書館づくりにおける図書館以外のノウハウの必要性を説きつつも、そもそもなぜ図書館が必要なのかに立ち返り、その上で、多ベクトル化する図書館において何が大事なのかを説明する。
大江健三郎文庫【p36-39】
阿部 賢一(東京大学文学部)
EZOHUB SAPPORO【p40-42】
小澤 聡(北海道立総合研究機構 エネルギー・環境・地質研究所 図書室)
論語と算盤オンライン【p43-44】
茂原 暢(公益財団法人 渋沢栄一記念財団 情報資源センター)
図書館には人がいないほうがいい【p45】
米澤 誠(元京都大学附属図書館、元東北大学附属図書館)
読書が苦手だった司書が教える 世界一かんたんな図書館の使い方【p46】
山田 美幸(熊本学園大学)