資料保存 参考ページ ~保存点検表に取り組んだ専図協会員館のコメント(みどりの図書館)~

 

みどりの図書館東京グリーンアーカイブス

黒田 晃子

 

みどりの図書館東京グリーンアーカイブスは、昭和39年(1964年)日比谷公園内に開設された東京都公園資料館に始まり、その後何回かの変遷を経て平成23年(2011年)からは、緑の専門図書館として広く一般市民に活用してもらえるよう、継続して資料の収集・保存、公開をしています。

東京都から預かった公園緑地に関する資料をもとに始まった図書館であり、図書や雑誌のほか、公園、庭園、霊園の古い図面や設計図、公園の古いパンフレット、古写真、絵はがきなど、貴重な資料を約17万点所蔵しています。また、明治から大正にかけて全国各地の近代公園設計に多くの功績を残した長岡安平氏の公園設計図、手記等、寄贈資料も充実しており、当館でしか見られないようなものも保管しています。資料はデータ化し、データ貸出にも応じています。

どこの図書館でも同じような悩みを抱えていることと思いますが、当館でも未整理の寄贈資料が悩みの種でした。とくに、古写真のネガ・ポジフィルム、スライド等の資料については、まだデータはおろか、整理すら出来ていないものがたくさんありました。このまま劣化が進んでしまうのではないかと心配しながらも、他の業務に追われ手がまわらずに、何年も放置している状態が続いていました。

そんな時、2019年7月の専門図書館協議会のイブニングセミナー「すぐ役立つ資料保存の基礎知識」に参加し、その後「蔵書保存自己診断表(専門図書館用)試作版」を使用して自館の診断を実施しました。さらにはこの自己診断表を提出した機関の中から、安江先生に直接ご相談させていただける機会をいただけるとのことで、是非にとお願いした次第です。

この自己診断表を作成するにあたって、あらためて自館のコレクションの概要を意識し、明確な資料保存方針が無いことへの危機感を持ちました。また、実際に安江先生にご来館いただき、当館の資料保存の状況について相談するとともに、A-Dストリップを用いた資料の劣化調査にもご協力いただきました。その結果、我々が心配していたほどには、資料の劣化が進んでいないこと、また、保管についても適切な保管方法で管理できていることがわかり、安心しました。遡ってみると、平成23年度に、所蔵図面の劣化調査及び図面の蔵書点検委託を行っており、その時の劣化調査報告書に基づいて現在も図面修復作業を毎年進めているのですが、その年に図面以外の写真やフィルム等についても、それぞれの資料に合ったサイズの保管箱を用意して、かなり大がかりな作業を行ったようで、その時の処置が適切であったため、現在にいたるまで、大幅に劣化することなく保管できていることがわかりました。

安江先生からは、まずは未整理資料について内容と優先順位の確認、目先の計画ではなく、長期的(5年~)にそれらの資料を毎年の予算の中で、整理、データ化していく計画をたてること、除籍できる資料については除籍していくことの必要性、また、どんなに簡易なものでもよいので、資料保存計画を作成し、担当者が変わっても引き継いでいけるようにすることなどのご助言をいただきました。また、予算については、クラウドファンディングや助成金の活用などもご紹介いただきました。

当館では今回の資料保存研修に参加する前から、所蔵している古写真、図面等についての資料調査会を行っていましたが、今回、安江先生にご助言いただいたことをきっかけに、資料調査会の委員の中のお一人に、未整理資料の確認や貴重性の確認など、お願いすることができました。こちらについては昨年度末から開始しています。

このように少しでも行動にうつすことが出来たことで、これからの作業についての道筋をつけることが出来ました。資料保存計画をたて、当館の貴重資料について今後も調査、整理、登録を進め、火を絶やすことなく未来につなげていけることを、願っています。