資料保存 参考ページ ~保存点検表に取り組んだ専図協会員館のコメント(大宅壮一文庫)~

 

「保存管理自己点検表」を使用してみて

大宅壮一文庫 事業課 元谷紀子

 

日頃、資料の保存について専門に担当する職員がいないため、保存に対していつも不安を感じていました。今回点検表の問いに1つ1つ回答していくことで、資料の現状について知ることができました。点検表は勤続年数が私より長い職員とチェックしたのでのですが、知っていること・知らなかったことがお互いにあることが分かり、情報の共有と保存に対しての館の方針が必要であることを感じました。

昨年の10月に、安江先生に当館にお越しいただいて書庫をご案内する機会を得て、たくさんのアドバイスをいただきました。自己点検表を作成した際、利用者に提供しない資料のためアーカイブス資料の所蔵はないと回答していました。先生から大宅壮一に関連する資料の有無を聞かれて、大宅壮一の原稿や大宅壮一が撮影した写真がアーカイブス資料であることに恥ずかしながら今回初めて気付きました。この資料を活かして大宅文庫のアピールをしてみてはとのアドバイスもいただきました。

資料の環境についてですが、当館では地震や火災対策のため雑誌の創刊号を最下層に配架しています。先生から水害についてのご指摘をいただき大型台風による水害も考えなくてはと思いました。

当館では雑誌の永久保存を原則としていますが、書庫にスペースの余裕がありません。除籍について考えたことはありませんでしたが、先生から大宅文庫で全て所蔵していなくても良いという考え方もあり、コンピュータ関連の雑誌などは科学系の大学に寄贈することを検討してみたり、酸化が進んでかなり傷んでいる「読書人」などの書評紙は埼玉県にある分館に移動するなどし、索引化されている記事は国会図書館で閲覧してもらうように利用者に案内するなど具体的に提案していただきました。

その他にカビや虫の被害がないため湿温度計の設置は必要ないと思っていましたが、変化があったら把握できるよう設置が必要とのアドバイスもいただきました。

雑誌の補修についても悩みの種で、表紙がとれてしまった雑誌やページが抜けてしまった雑誌を元の通りに修理するために集めていました。傷んだ雑誌は元の通り修理するのではなく、無理に補修せず、利用者にも注意を促して利用してもらうことも大事と教えていただきました。

資料を保存するための予算がない中で傷んだ雑誌が増え続けていたり、スペースの確保について半ばあきらめながら、その場その場の対応で乗り切っていました。自己点検表を作成し、安江先生からアドバイスをいただいたことで、やれることはまだまだあると勇気づけられました。自己点検をしてみることは大変重要であると実感しました。