241号特集 資料保存・修復

□ 241号特集 資料保存・修復

特集「資料保存・修復」にあたり【p.1】

保存計画ツールの発展-UCバークレー図書館からの報告- 【p.2-11】
バークレー・オグデン(カリフォルニア大学バークレー校図書館保存部長)
訳:安江明夫(専門図書館協議会顧問)

本稿はカルフォルニア大学バークレー校及び米国の他の主要な研究図書館で使用してきた保存計画ツール、即ち「資料状態調査」「ニーズ・アセスメント」及び最新の「リスク管理」をレビューするものである。そこから過去25年の間に、意思決定の素材となるデータ収集から優先順位設定・資源配分のための理論的根拠づけへと、専門家の関心と価値判断がどのように変化してきたかを知ることができる。 現在カルフォルニア大学バークレー校図書館で開発中のリスク管理手法は、学術研究者の情報アクセスを保証するためには蔵書保存が不可欠と大学が認識するのを助けている。

Preservation Planning Tools: Development and Application in the UC Berkeley Library 【p.2-11】
Barclay Ogden( Director for Library Preservation, UC Berkeley)

This article reviews preservation planning methods used at UC (University of California) Berkeley and other major research libraries in the United States: condition surveys, needs assessment, and most recently, risk management. From the review we learn how professional concerns and values have changed in the last 25 years, from the kinds of data gathered to inform decisions to the rationale used to set priorities and allocate resources. Risk management instruments currently under development for the UC libraries are helping the University appreciate that preservation of its collections is essential to ensure continuing access to information for the academic community.

国立国会図書館におけるIPM対策-東京本館におけるカビ対策を中心に-【p.12-20】
中島尚子(国立国会図書館収集書誌部資料保存課)

できるだけ化学薬品に頼らず、複数の防除法を合理的に組み合わせて虫菌害を許容レベル以下に抑制するというIPM(総合的有害生物管理)の考え方は農業分野で誕生し、博物館・美術館等文化財保存分野に導入され、近年、図書館界にも普及してきたところである。国立国会図書館では、平成19年末に洋書を中心に数千冊規模のカビ被害が発見された。このカビ被害に対し、資料管理担当、施設担当、資料保存担当その他、多くの職員が協力し合い、試行錯誤を繰り返しながら、平成20年度、21年度にかけて対策を実施し、経験を蓄積してきた。具体的には、定期的な観察と資料清掃、温湿度計測と除湿対策、組織横断的な検討組織の設置と情報共有の推進等、着手可能なところから対策を組み合わせて実施し、カビ発生を低いレベルに抑制している。本稿では、この当館の経験を、図書館におけるIPM対策の実践事例の一つとして紹介したい。

災害時における歴史資料保全活動とその方法―歴史資料ネットワークの取り組み現場から―【p.21-28】
板垣貴志、吉原大志(歴史資料ネットワーク事務局員)

歴史資料ネットワークは、1995年の阪神・淡路大震災で被災した歴史資料を救出・保全するために設立されたボランティア団体である。2004年に初めて、水害によって被災した歴史資料の保全活動を行った。 その活動のなかで歴史資料ネットワークが用いた、水損史料に対する応急処置方法は、「どこでも・誰でも・簡単」にできる方法である。その方法のうち、水に濡れた史料の乾燥方法、汚れた史料の水洗い方法などを紹介した。

和本を千年残すために-公開と保存のための基礎知識-【p.29-37】
橋口侯之介(誠心堂書店主/成蹊大学文学研究科非常勤講師)

各種の図書館では江戸時代以前の古い書物(和本、和古書)も少なからず所蔵していることと思われるが、それを有効に公開し適切な保存をするための手軽なテキストがないのが実情である。これまで数百年は生きてきた書物、それをこれからも同じ時間は残していかなければならない。そこで専門図書館向けに、和本類をどのように扱い、いかに保存していくかの方法を述べたい。その場合、ただ保管するだけでなく、公開と両立させていく考えが必要である。公開とはたんに閲覧に供することだけでなくデジタル化することで、より有益な利用法とすることができる。また「もの」としての図書を保存するだけでなく、その知識も同時に伝えていかなければならない。決して難しいことではないので、そうしたスキルをあげていくことが必要である。本に愛情をかけることで、本は残っていく、そうした姿勢があってもいいのではないか。

横浜開港資料館におけるマイクロフィルムの劣化調査報告【p.38-42】
石崎康子(横浜開港資料館 主任調査研究員)

平成21年6月、横浜開港資料館(Yokohama Archives of History)は、所蔵するマイクロフィルムについて、A-Dストリップを用いたサンプル調査を行った。また調査の結果に基づき、いくつかの対策を講じた。本稿は、当館におけるマイクロ資料保存管理についての報告である。

談話室 第18回 アーカイブカフェ(日比谷公会堂)【p.43-45】
高木和子(千葉大学非常勤講師)

ごぞんじですか? 地方議会と議会図書室【p.46-49】
会員交流委員会地方議会図書室小委員会

専門図書館を見る 東京文化会館音楽資料室【p.50-53】
吉井由希子(慶應義塾大学理工学メディアセンター)

資料紹介 日本の公文書【 p.54-55】
小川千代子(国際資料研究所)

事務局だより【p.56-59】