242号特集 国民読書年を機に本のこれからを考える

□ 242号特集 国民読書年を機に本のこれからを考える

特集「国民読書年を機に本のこれからを考える」にあたり【p.1】

2010年国民読書年を迎えて 【p.2-8】

渡辺鋭氣(財団法人文字・活字文化推進機構 専務理事)

書き言葉や話し言葉は、ほかの動物が持たない人間の能力である。ところがその「言葉の力」が衰え、「読む・書く・考える・伝える」といった総合的な読解力の低下が指摘されるにいたった。それに危機意識を持ったわが国の国会は、2010年を「国民読書年」に定め、国民の読解力の向上に努めている。草の根レベルでも多彩な読書推進活動が取り組まれ、新たな社会運動の流れが形成されつつある。文化・情報資源である各種の図書館への期待感も一段と高まっている。

読書科学研究の近年の動向と課題 【 p.9-13 】

塚田泰彦(筑波大学大学院人間総合科学研究科教授)

読書科学研究は、戦後における進展が著しく、とくに読書心理学はその中心的な研究領域とみられる。本稿では、読書を1.文字の認知による意味化のレベル、2.文章の理解のレベル、3.読書による人格形成や社会的適応のレベルに分けた。このいずれのレベルにおいても心理学的研究は行われているが、近年の研究動向をふまえて、2.のレベルでの成果と課題を中心にレビューした。なお、1970年代以前とそれ以降1990年代までとに分けて考察した。

子どもの読解力を育てる 【 p.14-18 】

二見小百合(特定非営利活動法人日本アニマシオン協会理事 / 少年龍馬図書館司書)

特定非営利活動法人日本アニマシオン協会は、「読書へのアニマシオン」を通してより多くの子どもたちにより充実した読書教育の機会を作るために、20冊セット貸し出しを中心にした会員サービスを行っている。また、龍馬進学研究会では、読書と作文の教室に併設した「少年龍馬図書館」で、読書に誘うための会員サービスを行っている。子どもの読解力を育てる目的で行われているふたつの会員サービスについて具体的に紹介する。

Googleの書籍・論文検索に関する取り組みについて
-GoogleブックスとGoogle Scholar 【 p.19-23 】

佐藤陽一(グーグル株式会社パートナー事業開発本部ストラテジック・パートナー・デベロップメント・マネージャー)

Googleブックスは、書籍の全文をデジタル化することで、書籍コンテンツをウェブ検索と同じようにすべて検索可能にする取り組みです。また、Google Scholarは、ウェブ上に公開された学術論文を対象とした検索サービスです。これらの検索サービスによってユーザーは自分の探している情報が掲載された書籍や学術論文を、より早く、より広範囲から、より的確に探し出すことができるようになります。現在、英語圏、ヨーロッパ語圏に比べると、日本語で書かれた書籍・論文の収録はまだ限られていますが、今後、より多くが検索可能になれば、インターネット上での日本語の知的環境はより豊かになり、知的生産活動の効率も上がるはずです。Googleでは、Googleブックス・Google Scholarの取り組みを一層拡大し、日本語の知的環境の充実に貢献したいと考えています。

文教大学図書館における電子Bookの導入 【 p.24-28 】

八代隆政、中村保彦(文教大学湘南図書館)

文教大学図書館は、越谷図書館と湘南図書館の2館よって構成されている。本学における電子Bookの導入は、電子ジャーナルを中心とした電子情報資源の拡がりからの影響により開始され、2010年現在の電子Bookタイトル数は1,177となっている。また、電子Book導入の主たる理由は、書架・収納スペースの狭隘化への対策にあり、導入過程は、2006年度から段階別に三つの期を経て現在に至っている。今後の課題としては、利用環境整備や利用率の測定があげられる。

デジタルと出版 【 p.29-34 】

沢辺均(ポット出版社長)

キンドルやiPadといった端末の日本での発売でますます出版界の大きな課題としてたち現れた電子書籍。この電子書籍状況から今後の出版を考えるために、まず出版とは何なのか?という確認から出発。そこから、今おこっている出版(メディア)の変容をデジタルとネットワークによる出版の大衆化として、それが出版のありようをどのようにしていくのかという視点を提示する。

特別寄稿 蔵書を考え直す視点 【 p.35-41 】

安江明夫(専門図書館協議会顧問)

情報環境が変化するなかで図書館の在り方が問われるようになって久しいが、そのことを念頭に蔵書の今後を考えるのが本稿の趣旨である。蔵書とサービスの改革を進めてきた専門図書館の優れた事例を参照しつつ、ミッションの確認、デジタル・ネットワーク技術の適用、デジタル資源の収集と活用、長期的展望の重要性等を「蔵書を考え直す視点」として提示する。

談話室 第19回
国民読書年連動企画 「本屋さんをエンジョイするよろこび」を伝えるウェブサイト
「本屋の歩き方」(http://hon-aru.jp) 【 p.42-46 】

永吉久人(凸版印刷株式会社 経営企画本部 事業企画部)

凸版印刷では、読者に「読書の楽しさ」「書店の面白さ」を伝え、読者と書店の情報接点としてのウェブサイト「本屋の歩き方」を2010年4月よりスタートした。凸版の持つITと店頭活性化のノウハウを活かし、ウェブとリアル書店を連動させた新しい情報発信により、書店の活性化、出版業界の活性化を目指す。

ごぞんじですか? カーリル 【 p.47-53 】

洛西一周(Nota Inc.)

専門図書館を見る 国立国会図書館国際子ども図書館 【 p.54-57 】

山口文子(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター図書室)

資料紹介 資料保存のための代替 【 p.58-59 】

石井美千子(独立行政法人日本貿易振興機構 アジア経済研究所図書館)

各地区協議会の平成21年度活動および平成22年度事業計画(概要) 【 p.60-68 】

事務局だより【p.69-71】