244号特集 大学の中の専門図書館

□ 244号特集 大学の中の専門図書館

特集「大学の中の専門図書館」にあたり 【p.1】

大学における法律図書館─大阪大学大学院法学研究科資料室 【 p.2-7 】

笠学(大阪大学大学院法学研究科資料室)

大阪大学大学院法学研究科資料室は国立大学法人大阪大学の部局である大学院法学研究科・法学部の設置する図書室である。10の研究科等を擁する総合大学である大阪大学において、法学研究科資料室は設置者、蔵書、サービスのいずれの点から見ても、法学・政治学分野に特化した図書室といえるだろう。

本稿では、法学研究科資料室の役割と業務について、学内外の機関とのつながりにも触れながら報告を行い、大学における法律図書館の一例を紹介する。

調査資料提供と研究支援─関西学院大学産業研究所 【 p.8-12 】

石田文子(関西学院大学産業研究所)

関西学院大学産業研究所は前身の高等商業学部調査部がその後の大学昇格に伴って1934(昭和9)年4月に商経学部の付属機関として発足し、戦後は大学長直属の研究機関として存続して現在に至る。その研究活動は、経済・商学両学部の付属機関としてのものに限定されていたが、2008年の規程改正により、広く社会科学系分野をも包含することになった。現在、資料センターとしての専門図書館機能と研究支援機能を併せ持った社会科学系の研究所としてその活動を展開している。設立当初より収集資料を公開する一方で、経済や産業に関わる研究活動を行い、研究成果の共有のために出版物を公刊し、講演会、公開シンポジウム、研究会、ワークショップ等を開催して、社会還元を実践してきた。

また、最近では、当研究所が関西で4番目となるEU情報センター(EUi)に指定され、EUより託される刊行物資料が広く一般公開されている。

書誌学と文庫─慶應義塾大学附属研究所斯道文庫の事業と発信 【 p.13-19 】

住吉朋彦(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫)

慶應義塾大学附属研究所斯道文庫は、日本と東洋の古典書誌学を専門とする文庫である。書誌学とは、書物の実際を記録した書誌を基礎に、書物の文化を扱う学問であり、書物どうしの関係を明らかにしていき、全体の意義を考える研究をいう。

文庫とは、日本在来の図書収蔵機関の名で、書物の収集と研究を一体的に行う組織を指す。

斯道文庫では、典籍の実物を収めて研究の資料とし、先学の蔵書を引き継ぐなど、文庫的活動に心がけている。また他機関での書誌調査と複製収集も、事業の特色である。これらの収集資料については、専門研究者への供用に応ずる他、内外の共同事業にも力を尽くし、書誌学の拠点、大学附属研究所としての役割を演じようと試みている。

斯道文庫の直面する課題は、資料の維持、研究成果発信の多様化、そして専門分野である書誌学普及の必要に係っている。この小文では、そうした課題に対する、ささやかな取り組みを紹介したい。

開かれた大学の開かれた専門図書館─筑波大学図書館情報学図書館 【 p.20-26 】

気谷陽子(筑波大学附属図書館情報サービス課主任専門職員図書館情報学図書館担当)

筑波大学図書館情報学図書館は、筑波大学附属図書館に設けられている4つの専門図書館の一つであり、平成14(2002)年10月に、旧図書館情報大学が筑波大学と統合したことによって現在の形になった。筑波大学附属図書館は開館以来、開かれた図書館、集中管理、全面開架を特徴とし、中央図書館を含めて全館が同じ仕組みで運営されている。当館の蔵書は、主として旧図書館情報大学時代に、(1)基礎的情報資料、(2)図書館情報学関係資料、(3)参考図書資料、(4)教育・研究の展開に直接関わる情報資料、を収集することを選書方針に掲げ、第一次から第三次まで実施された資料整備計画および文部省から配分を受けた大型コレクションによって、図書館情報学分野の専門図書館にふさわしい蔵書を目指して整備された。

専門図書館における利用と保存─一橋大学社会科学古典資料センターの取り組み 【 p.27-33 】

床井啓太郎(一橋大学社会科学古典資料センター)

一橋大学社会科学古典資料センターは、1978年に附属図書館から分離して設立された専門図書館で、1850年以前に出版された社会科学系の西洋古典資料を中心に約75,000冊の資料を所蔵している。センターでは、所蔵する資料を利用者の利用に供する以外にも、「大学の中の専門図書館」の特徴を活かして様々な活動を行っている。センター内に設置された保存修復工房では、専門のスタッフが所蔵資料の修復や書庫内環境の整備にあたっている。センターで主催している2つの講習会では、これまでに蓄積された研究成果や経験を他機関と積極的に共有している。また、古典資料の目録作成やレファレンス、展示など、主題専門分野への知識を必要とする業務にあたらせるために、専門助手と呼ばれる独自の職制を導入しているのも特徴のひとつである。本稿では、これらの特徴を紹介しながら、センターの専門図書館としての特色を示した。

専門図書館としての?北海道大学スラブ研究センター図書室 【 p.34-44 】

兎内勇津流(北海道大学スラブ研究センター)

北海道大学スラブ研究センターは、ロシアをはじめとするスラブ・ユーラシアの地域研究に携わる、国内の中核的機関であり、2010年には共同利用・共同研究拠点の指定を受けた。その図書室および北大附属図書館等の関連コレクションは、国内最大規模のものであり、内外の多くの研究者から活用され、高く評価されている。その運営は、主題専門家の教員を中心に行われている、国内的では少数の例のひとつであるが、収集水準の維持・向上、地域的バランスの改善、収蔵スペースの確保などが課題である。

談話室 第20回
図書館サポートフォーラム─図書館出身者の自由な広場─
~社会的共通資本としての図書館をサポート~ 【 p.45-48 】

末吉哲郎(図書館サポートフォーラム特別顧問)

ごぞんじですか? 帝国議会会議録検索システム 【 p.49-53 】

中山信一郎(国立国会図書館調査及び立法考査局電子情報サービス課)

専門図書館を見る
オムロン株式会社京阪奈イノベーションセンタ情報センタ 【 p.54-58 】
千本沢子(大阪産業労働資料館 エル・ライブラリー)

資料紹介 フェア・ユースの考え方 【 p.59-60 】
時実象一(愛知大学 教授)

資料紹介 ブックビジネス2.0 【 p.60-61 】
當山日出夫(立命館大学 グローバルCOE日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点 客員研究員)

資料紹介 MLA連携の現状・課題・将来 【 p.61-62 】
八重樫純樹(静岡大学情報学部教授)

平成22年度地方議会図書室等職員セミナーの概要 【 p.63-64 】
会員交流委員会地方議会図書室小委員会

事務局だより 【p.65-66】