246号特集 周年事業と図書館

□ 246号特集 周年事業と図書館

特集「周年事業と図書館」にあたり 【p.1】

せんだいメディアテークの開館10周年 【 p.2-9】

佐藤泰(せんだいメディアテーク副館長)

メディアテークは、アートギャラリー・図書館・映像文化の発信・目や耳の不自由な方への情報提供という4 つの機能を融合した複合文化施設として2001年1 月に開館した。年間100万人をこす利用者は地域に賑わいをもたらす一方で、伊東豊雄の代表作ともされる壁のない空間と、さまざまな文化を取り込みつつメディアをキーワードとして展開される事業は内外の注目を集めてきた。開館10周年を迎えるにあたり、激変するメディア環境とグローバルな地域社会の中でのメディアテークの新しい役割について、ともに考える機会を設けた。

「食の文化ライブラリー」の歴史と財団法人味の素食の文化センター設立20周年記念事業 【 p.10-14 】

飯田祐史(財団法人味の素食の文化センター事務局長)

「食の文化ライブラリー」を運営する「財団法人味の素食の文化センター」は、味の素株式会社が1989年同社の創業80周年の節目に農林水産大臣の許可を得て設立されました。「食の文化ライブラリー」の歴史はさらに長く、味の素株式会社が1979年に創業70周年記念事業として開始した食文化事業の一環として2 年間の準備期間を経て、1981年に仮オープンしています。当時の資料数は約6 千点、図書以外に貴重な古書、錦絵などの資料も加えて約30年後の2010年12月末には約35千点にまで成長しました。利用者累計は1991年以降で約12万人にのぼります。今回のテーマである周年事業についてですが、我々の場合は財団設立の20周年をテーマに事業を行っております。レポートでは、ライブラリーの30年の歴史と、財団の他の事業の解説と、財団設立20周年記念事業についてまとめました。

神奈川県立川崎図書館の開館50周年事業とその成果 【 p.15-21 】

石原眞理(神奈川県立川崎図書館)

神奈川県立川崎図書館は、2008年11月に開館50周年を迎え、それを記念し記念式典や記念講演、展示など、一連の事業を実施した。本稿では、特にそれらの事業の「成果」に焦点を当てながら、一連の事業を振り返る。
図書館の周年事業の成果としては、図書館の外部に対する「広報」と、図書館の内部における成果-職員が一つの目標に向かって業務を進めることにより職員としての一体感が醸成されることや、記念誌の編纂の過程で過去の歴史を振り返ることなどにより、自館についてより深く知ることができること-が考えられる。本事業においては、外部に対する「広報」の成果が、マスコミに取り上げられた回数が24回という目に見える形で表れ、それが入館者数の増につながった。開館50周年事業として多くのイベントを企画し、実施し、それらが多くのマスコミに取り上げられた要因として、①これまで多くのイベントを行ってきたノウハウの蓄積があったこと、②報道機関に対して積極的に広報活動を行ったこと、③他の機関との連携協力があったこと、が考えられる。

周年事業と図書館―阪急電鉄の周年事業と池田文庫 【 p.22-27 】

鶴岡正生(財団法人阪急学園池田文庫職員)

(財)阪急学園池田文庫は、阪急電鉄を母体とする私企業図書館であり、演劇関係の資料を数多く所蔵する専門図書館であると同時に、阪急・東宝の創業者小林一三に関する資料を含む阪急電鉄関係資料を多数所蔵している。したがって、演劇関係の企画展示のほか、阪急電鉄の周年事業に資料の提供という形で関わったり、その時期に合わせて独自でテーマを絞って“阪急”の周年記念展示を行ってきた。
本稿では、阪急電鉄の周年事業、特に創立100周年及び営業開始100周年の記念事業、並びに池田文庫が所蔵する資料を素材に取り組んだ所謂”阪急”の周年に関係した企画展示を紹介し、その結果と事業効果等について考察する。

慶應義塾創立150年記念事業と慶應義塾図書館 【 p.28-35 】

石黒敦子(慶應義塾大学三田メディアセンター)

慶應義塾の創立150年は学内にとどまらず、社会に公開、貢献することを念頭に置いて企画された。図書館は2 つの面で期待を寄せられた。1 つは豊富な所蔵資料、もう1 つはデジタル化と整理のノウハウである。記念展覧会等への資料の出品とメタデータの確認等、あるいはグーグル図書館プロジェクトで10万冊以上の図書のデジタル化・公開を実施したことなどは所蔵資料を駆使しての社会へ向けての展開である。他方、『写真集 慶應義塾150年』の編集を中核となって行ったのは、後者に期待されてのことだろう。機関リポジトリKOARAのプライベートエリアに、収集した写真を納め、著作権や歴史年表にも気を配り、調査しながら写真集刊行を実現、古写真の修復・保存も実施した。また、記念建築事業はキャンパスの機能分化、住み分けを見直す契機となり、図書館もその影響を受け、見直しを図った部分もある。常日頃、来るべき周年事業に備え、所蔵資料の整理と特徴を捉えておくことの必要性を痛感した。

談話室 第22回
Japanese Company Histories Interest Group(Shashi Group)
―北米における社史研究の現状 【 p.32-35 】

グッド長橋広行(社史グループ座長(ピッツバーグ大学図書館))

ごぞんじですか?
CODE4Lib JAPANについて 【 p.39-43 】

林賢紀(農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所研究情報課)

専門図書館を見る
社団法人日本工業倶楽部 実業家資料室 【 p.44-50 】
村山元理(常磐大学国際学部経営学科 教授)

実業家資料室は、平成15年に日本工業倶楽部の新館落成と同時に、別館5 階に設置された実業家の伝記を主体とする図書室で日本の実業家の伝記資料を収集している。合わせて実業家の伝記目録も作成された。蔵書には倶楽部の歴史を語る一次資料などもある。
本稿では、大正6 年に設立された我が国最初のビッグビジネスの経済団体である日本工業倶楽部の目的と役割、さらに現代の経済団体へと連なる歴史を解説した。そして財界人の精神が本館の屋上に鎮座する男女の労働者像にシンボライズされているように、労資一体観であったことを明らかにした。さらに長らく倶楽部の専務理事を務め、商工大臣ともなった中島久万吉が士魂商才の精神をもって国家経済のために尽力し、この建物を愛していたエピソードを織り交ぜた。
この資料室の利用者数は決して多くないが、「実業家メモリアル」として構想されたのであり、「財界人記念館」の設立が期待されていることを付記した。

資料紹介
情報管理と法(ネットワーク時代の図書館情報学) 【 p.51-52 】
山本順一(桃山学院大学経営学部教授)

資料紹介
古典籍へようこそ―京都府立総合資料館の書庫から 【 p.52-53 】
渡辺佳子(学習院大学人文科学研究科アーカイブズ学専攻)

雑誌データベース「日本語学術雑誌情報源ナビゲーター(JJRNavi)」:その後の報告と考察 【 p.54-60 】
伊藤民雄(実践女子学園所属)

※筆者投稿による本稿は、本誌231号(2008.9)特集「図書館サイトに付加価値を(2)」掲載の「Directory of Open Access Journals in Japan-日本語オープンアクセス誌データベースの紹介」の続報となるものである。


第2回アジア専門図書館国際会議の概要 【 p.61-66 】
池田貴儀(独立行政法人日本原子力研究開発機構/専門図書館協議会会員サービス委員会委員)

事務局だより 【p.67-68】

平成23年度総会、全国研究集会開催のお知らせ 【 p.69 】