247号特集 ビジネス系ライブラリー

□ 247号特集 ビジネス系ライブラリー

特集「ビジネス系ライブラリー」にあたり 【p.1】

ビジネス系レファレンスの情報源 【 p.2-8】

藤田実花(国立国会図書館 調査及び立法考査局 農林環境課)

近年、ビジネス支援サービスを行う図書館が増加している。ビジネス系レファレンスで需要の多い情報には、統計情報、市場情報、企業情報等がある。統計は、特定の集団について行った調査の結果を集計・加工した数値であり、ビジネス情報の基礎となる情報源と言える。市場情報は、特定の業界の状況を知るための情報であり、数値だけではなくそれに対する分析や解釈が含まれている点が統計と異なる。特定の業界にどういった企業が参入しているかを示す企業リストや、個別の企業に関する詳しい情報などの企業情報もビジネスシーンにおいて必要とされることが多い。本稿では、ビジネス系レファレンスの基礎的な情報源を、統計情報、市場情報、企業情報、その他の四つに分けて紹介する。

公立図書館におけるビジネス支援サービスの現状と課題 
【 p.9-14 】

成田亮子(ビジネス支援推進図書館協議会)

日本の公立図書館にビジネス支援サービスが導入されて10年が経過した。豊富な資料を所蔵し、誰もが無料で利用できる公立図書館は、中小企業や個人にとって重要な情報サポートセンターであり、現在全国の200館以上の公立図書館で資料の提供やビジネスレファレンス、関連セミナーの開催といったサービスが実施されている。平成12年に有志により設立されたビジネス支援図書館推進協議会では、ビジネス支援サービスの実施状況に関する調査や研修会、ビジネスレファレンス・コンクール等の事業を行い、我が国の公立図書館におけるビジネス支援サービスの普及と発展に貢献してきた。各地でサービスの成果として創業等の具体的な事例が報告されるようになってきているが、今後の課題として、外部機関との連携、図書館員の研修制度の確立、住民への積極的な広報等が挙げられる。

大学生の就職活動におけるコミュニケーション課題と解決の方向性 【 p.15-20 】

岡崎仁美(株式会社リクルート リクナビ編集長)

「史上最低の内定率」といった文言で報じられている大学生の就職活動に、今いったい何が起きているのか?毎年約8000社が参画し、約60万人の学生が利用する就職サイト『リクナビ』の編集長として、長年学生に就職情報を届けてきた情報会社の立場から、低内定率の背後にあるミスマッチの実態やコミュニケーション不全の拡大の事実と、その解決の方向性についてまとめました。『ソー活』と呼ばれる、学生と企業の相互理解の深化を促すソーシャルメディア活用の有用性についても論じています。

ジェトロ・ビジネスライブラリーが提供する海外ビジネス情報 【 p.21-26 】

荒居万里子(ジェトロ・ビジネスライブラリー)

国際ビジネスの専門図書館であるジェトロ・ビジネスライブラリーの分類法、収集対象資料、来館者のプロフィールと調査対象地域・項目等を紹介し、海外とのビジネスに必要な情報とは何かということを概観する。
国際ビジネス情報はその目的、対象国、業種・商品などにより多岐にわたるため、本稿で具体的な資料やデータベースを紹介するかわりに、当ライブラリーのウェブコンテンツ、中でも特にアクセス数が多い「テーマ別調べ方ガイド」を紹介した。これは、よく聞かれるテーマについてその調べ方と所蔵資料および関連する情報源を紹介したものである。「海外進出日系企業を調べるには?」を始めに、これまで取り上げたものはいずれも海外との貿易・投資に必須の項目で、世界各国概況・世界各国の企業・関税率・貿易統計・産業・市場の調べ方、貿易実務、海外進出、Doing Business in Japan など、現在8テーマ42本のコンテンツを公開している。国際ビジネスのポータルサイトとして活用いただきたい。

機械工業図書館からBICライブラリへ 【 p.27-31 】

結城智里(一般財団法人機械振興機構協会経済研究所情報創発部(BICライブラリ))

機械工業図書館は、四十数年にわたり機械産業を主題として雑誌、統計、団体報告書、社史などを中心に収集、公開を行ってきた。
なかでも機械産業の形や動向を知るためのツールとして統計資料を重視し、収集に努めてきた。ここでは政府が実施している調査に基づいた代表的な機械生産統計の概要、政府統計の情報を補う工業会の統計を紹介した。また機械工業図書館が独自に作成した政府統計を加工したデータベースも紹介している。
機械工業図書館は本年1月より“交流の場をつくる”というコンセプトのもとに改装工事を開始した。5月にBICライブラリとして開館する。

ビジネス情報収集の基礎知識と基本的思考について 【 p.32-38 】

長井良平(株式会社日本能率協会総合研究所)

「情報爆発時代」と形容される近年では、様々な情報源から必要なビジネス情報を効率的に探し出し選別することが非常に困難となっている。インターネットの普及に伴い誰もがWeb上から無料で有益な情報を入手可能になったが、実際には本当に重要な情報に辿りつくことのないまま情報収集活動を終了しまっていることもある。ビジネス情報の収集を効率的に行うためには、手当たり次第にただ検索を行うだけでは不十分で、情報源に対する知識やアプローチの順番等を踏まえながら「情報収集のシナリオ」を頭の中で組み立てることが必要となる。また、ビジネス情報収集の最終的な目的は「情報を探し出す」ことではなく、「依頼者の問題を解決する」ことにある。本稿では、ビジネス情報収集の基本的な考え方を解説しながら、主な情報源の特徴をあわせて紹介する。

私、流しのライブラリアン。
~組織で活かす”編集”と”プロデュース”能力
ニッカウヰスキーのバー読(どく)を事例に~ 【 p.39-44 】

藤澤聡子(アサヒビール株式会社 研究開発戦略部 トレンドリサーチ室)

2011年2月23日のイブニングセミナーの講演内容を執筆した。筆者の司書業務からマーケティング部門へ異動となった経験と、自称、「流しのライブラリアン」としてニッカウヰスキーの販促「本をつまみにウイスキーに酔う」バー読(どく)企画など本にまつわる活動を紹介する。司書をとりまく環境が大きく変化を見せる現在、「拡張司書」という概念を提案、一風変わった実例としたい。

談話室 第23回
「生きている本」との対話
~リビングライブラリーという試み~ 【 p.45-49 】

平井麻紀(東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野)

ごぞんじですか?
リサーチ・ナビ 【 p.50-53 】

渡邉太郎(国立国会図書館主題情報部参考企画課 情報サービス第一係)

専門図書館を見る
NPO法人「体育とスポーツの図書館」 【 p.54-58 】
山本紀恵(専門図書館中部地区協議会幹事)

私の仕事、わたしの一日 第1回
組織を離れた個人のために 【 p.59-61 】
小林麻実(アカデミーヒルズ六本木/平河町 ライブラリー)

資料紹介
もうすぐ絶滅するという紙の書物について 【 p.62-63 】
伊藤敬(秩父宮記念スポーツ博物館 図書館)

資料紹介
コンピュータが仕事を奪う 【 p.63-65 】
長谷川昭子(日本大学文理学部 非常勤講師)

資料紹介
インターネット時代のレファレンス
実践・サービスの基本から展開まで 【 p.65-66 】
高崎千晶(済生会川口総合病院図書室)

事務局だより 【p.67-68】

平成23年度総会、全国研究集会開催のお知らせ 【 p.69-70 】