251号特集 つながり/つながる専門図書館ネットワーク

□ 251号特集 つながり/つながる専門図書館ネットワーク

特集「つながり/つながる専門図書館ネットワーク」にあたり 【p.1】

ひと、こころ、知恵のつながり
【 p.2-8】

吉野諒三(統計数理研究所・調査科学研究センター長)

2011年3月11日の東日本大震災の後の人々の冷静な行動は、世界の人々に感銘を与え、また「日本人は、なぜあのような災害時に冷静な行動がとれるのか」という疑問の解明にも関心がもたれた。
半世紀以上にわたる統計数理研究所の「日本人の国民性」と「人々の意識の国際比較」の調査方法論の研究で得られた知見をもとに、人々の健康や福祉とも密接に関係しているソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の中で中心的な人間関係のあり方、人々の社会参加やネットワークに関して考察する。特に「日本人の国民性調査」、「アジア・太平洋価値観国際比較調査」や「生命観の国際比較」の「集団所属率」の集計結果の一部を参照しながら、人々の人間関係のあり方について触れよう。人や心の繋がりのあり方の研究が、専門図書館の知恵の繋がりのあり方の参考となることを期待する。

人脈ネットワークを楽しもう―アウターネットの会(つくば)活動紹介 
【 p.9-16 】

隈千枝(アステラスビジネスサービス株式会社 研究支援センター 情報ナビゲーショングループ)

アウターネットの会は、1996年につくば市内の製薬企業の図書・情報担当者の集まりとして発足し、活動を開始してから今年で16年目に入る情報交流会である。
本稿では、アウターネットの会が発足した経緯、メンバーのつながり、どのような運営方法で行ってきたか、これまでに取り組んできた活動事例について紹介する。レファレンス事例集やコミュニティサイトへの取り組みを通し、有志によるボランティアで継続していくことの難しさ、つくば市の環境変化により引き起こされた課題についても触れ、新しい技術によるネットワーク上のコミュニケーションばかりではなく、人との出会いやつながりによって形成される人脈ネットワークがもたらす効果について述べた。

継続し、発展をめざすローカルネットワーク
神奈川県資料室研究会50年の歩みを振り返る【 p.17-22 】

大塚敏高(神奈川県立川崎図書館)

神奈川県資料室研究会は、神奈川県を基盤に活動を継続しているローカルネットワークである。2011年に発足50年を迎えた。創設時から切れ目なく続いている例会やデポジットライブラリーを紹介し、公共図書館である川崎図書館が事務局を務めていること、会員のニーズと合致した例会を開催していることなどを50年継続している理由として見直してみる。

NACSIS-CAT/ILLシステムを利用した相互協力
―国立民族学博物館図書室の場合 【 p.23-29 】

岡田綾子(国立民族学博物館 情報管理施設情報サービス課情報サービス係)

大学図書館にとって、今やなくてはならない存在となっている国立情報学研究所の目録所在情報サービス(NACSIS-CAT/ILL)について、参加機関のひとつとして、国立民族学博物館図書室がどのように利用しているのか、どのようなメリットやデメリットがあり、それをどう捉えているのかを紹介した。

キーワードは、北海道、そして竹鶴政孝
~公立図書館と企業の連携で地域に発信~ 【 p.30-36 】

鈴木浩一(北海道立図書館利用サービス部北方資料室)

「竹鶴政孝と北海道~日本にウィスキーを伝えた男の愛と情熱の物語~」ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝。イギリスに留学し、帰国後、ウィスキーづくりに情熱を燃やすも・・・。そして、ついに北海道余市町で、理想のウィスキーづくりを始めたが、様々な困難の連続、そして、イギリスから日本に一緒に来た妻リタに支えられ、待ちに待った最初のウィスキーができた・・。
平成23年2月、「竹鶴政孝」をキーワードに都道府県立図書館である北海道立図書館において、アサヒビール(株)と協力して、資料展示会と講演会を開催。図書館資料と企業の資料館の資料、資料展示会の経験と講演会セミナーの経験、お互いのノウハウを持ち寄り、共に初めての公立図書館と企業の協力により開催した事業の経緯、概要、その成果と課題を報告する。

談話室 第26回
本のお祭り「ブックオカ」の5年間をふりかえって 【 p.37-40 】

大井実(ブックオカ実行委員長)

専門図書館を見る
総合研究大学院大学附属図書館 【 p.41-46 】
重田有美(株式会社富士通研究所)
木村素子(公益財団法人日本海事センター)

私の仕事、わたしの一日 第4回
砂防を通じての私の役割 【 p.47-48 】
松本美善(砂防図書館)

資料紹介
闘病記文庫入門 【 p.49-50 】
城山泰彦(順天堂大学図書館)

阪神・淡路大震災と図書館活動 【 p.50-52 】
江草由佳(国立教育政策研究所教育研究情報センター)

人文学と電子編集 【 p.52-53 】
早川美彩(独立行政法人日本原子力研究開発機構)

東南アジア逐次刊行物の共有化
―データベース構築を通じて― 【 p.54-60 】

木谷公哉(京都大学東南アジア研究所)
北村由美(京都大学東南アジア研究所)

本稿の目的は、国内における東南アジア資料を収集する図書館間連携の一環として構築した「東南アジア逐次刊行物総合目録データベース」(URL: http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/info/db/sealib/)の開発の過程と手法を紹介することによって、専門図書館における独自データベース構築の際の参考例を示すことである。本稿では、筆者らが開発した「東南アジア逐次刊行物総合目録データベース」のシステム仕様や設計の経緯について紐解きながら、情報処理技術者、研究者、司書が、一堂に介した共同研究によって実現できた、データベース構築について解説する。本稿によって、専門図書館で求められているデータベース構築方法へのひとつの有効手段を提示すると同時に、情報共有化の新たなモデルを提示したい。

事務局だより 【 p.56-58 】