253号特集 図書館を“魅せる”

□ 253号特集 図書館を“魅せる”

特集「図書館を“魅せる”」にあたり 【p.1】

ブランディングと図書館―デザインにおける可能性とそのヒント
【 p.2-7】

平野雅彦(静岡大学人文社会科学部客員教授、元静岡市図書館協議会会長)

「ブランド」と聞くと、バッグや時計といった「モノ」を思い浮かべることが多い。そのブランドを再定義し、コントロールする「ブランディング」という手法が図書館運営に応用できないかを検討する。そのためのキーワードは、「思い」「物語」「デザイン」。特に人の行動を先回りし、問題を解決するための方法としてのデザインの可能性について、筆者が大学の研究室で実際に行っている事例についても具体的に紹介する。また「弱音を吐く図書館」という考え方を提示し、利用者といっしょに作っていく図書館運営を提案する。ブランドとは、いわゆる積み重なる時間の襞(ひだ)であり、時間軸をいかに長く取り、継続的に取り組んでいけるかが重要であるということを示唆する。

着装者の観点からみる仕事時の服装とキャリア志向【 p.8-13 】

大石さおり(文化学園大学 服装学部)

毎日の仕事に着るものを考えることが楽しみの一つであるという方もいれば、面倒で仕方がない方、考えることなく出されたものやあるものを着ていくという方もいるだろう。実は、この仕事の際の装いに関する考え方が着装者のキャリア志向など仕事に関連する重要な要因と係わっているのである。
これまで日本や海外で蓄積された知見をもとに、着装者の観点からキャリア志向を中心として、仕事時の服装について考察する。コミュニケーションの一形態であり、印象形成の手がかりである服装は、職場でどのような役割を果たしているのか、どのような意味を持つのかを考えてみる。

図書館員、見せて見られて魅せられて。【 p.14-17 】

新谷知之(東海大学伊勢原図書館)

大学図書館で33年間、図書館を“魅せる”ことなど意識したことなかった筆者ではあるが、日頃から「美しい仕事」へのこだわりはあった。それは、「無駄のない洗練されたものに独創的なものを加え、決して華美に飾らない」ことであるが、どこか“魅せる”こととの共通点があるように思えた。図書館は、利用者と図書館員がいて成り立つ職場である。つまり魅せられる対象は利用者であり、魅せるのは図書館員である。魅せるためには“見せる”ことから始め、それが見られることで魅せられるという論拠のもとに、「掲示物へのこだわり」や「ものを溜めない工夫」の実践例から、“魅せる”ことに少しでも近づこうとした。そして、図書館員は、見せるものや見せることを通していつも見られており、いつ見られても魅せることのできる図書館員でありたいと結んでいる。

変化を見せる、変化で魅せる
~“動き”をつくるライブラリーマネジメント~ 【 p.18-21 】

尼川洋子(人と情報を結ぶWEプロデュース)

小さな専門図書館に利用者を惹きつけ、コレクションの活用を促すマネジメントとして、エントランス空間の演出~“魅せる”空間づくりと、マーケティングの視点でコレクションを“見せる”“動かす“手法として、コレクションのパッケージングについて事例を紹介し、現場でできるいくつかの取り組みを提案する。

見せる?魅せる!ドキドキをワクワクに変える!! 【 p.22-26 】

天野由貴(椙山女学園高・中図書館)

椙山女学園高・中図書館は、東西南北を中学・高等学校の教室等に囲まれた校舎の真ん中にあり、生徒の登下校時の動線上に位置する、正門からのアクセスも最短距離という恵まれた立地条件下に位置している。図書館が運営上重要視していることは、「全部見せる」「見せるのではなく魅せる」「たまには止める」の3つである。「全部見せる」ことは、蔵書の全てを生徒の手に取れる所に置くことで今まで目に触れなかった多くの蔵書から知の蓄積を見せることによって、知識体系の圧倒的な広がりと奥深さを知ることができる。また、「見せるのではなく魅せる」ことは、①本の「装丁」の魅力でひきつけること、②本の「内容」によるテーマ展示で見せること、③動きを作りその動きを見せることの3つで魅せる仕掛けを作ることになる。そして、たまには生徒の動きを「止める」仕掛けを作ることで、できるだけ長い時間図書館に留まれる動線を生み出すという仕掛けになる。これらの仕掛けを司書が自らの楽しみながら作ることで、生徒の興味を図書館の期待へと変えることができる。

図書館で、できること。図書館が、できること。
―図書館と学生の協働によるコミュニケーションのかたち― 【 p.27-31 】

多賀谷津也子(大阪芸術大学図書館)

2012年、情報社会は急速に進化し、いつでも、どこでも、必要な情報を入手することができるユビキタス社会へと向かっている。そんな時代の中で、時間や場所も限定される図書館へとわざわざ利用者の足を運ばせるためには、従来の図書館機能の他にプラスアルファの図書館としての魅力が必要であると考える。自館の特徴や有用性を明確にし、利用者にとって魅力や価値のあるものを打ち出して行くためには、どうすれば良いか。利用者が行きたくなる魅力的な図書館を形成するためには、図書館の既成概念を時には緩和し、新たな試みにも図書館を開く勇気が必要であると考える。本学の実践例を参考に利用者(学生・教員)との連携、協働の必要性とその意義を伝えたい。

「図書館」を超える図書館をめざして 【 p.32-35 】

若林尚夫(千代田区立日比谷図書文化館 館長)

日比谷図書文化館は、千代田区が歴史と伝統ある旧都立日比谷図書館を東京都から移管を受けて、2011年11月、新たにオープンさせた文化施設である。コンセプトは「知識への入口」「学びの拠点」。「ライブラリー機能」「ミュージアム機能」「文化活動・交流機能」に加えて、その3つを発展的に「つなぐ」「結ぶ」役割として「アカデミー機能」を置き、各機能を通じた講演会、シンポジウム、講座、イベントなど、多彩なプログラム展開を行なう。当館は単に「図書館」にその他の機能が付帯した施設ではない。“出版物に限定されない広範な文化資源”を対象とし、それだけでも独立しうるそれぞれの機能が有機的に結びつくことによって、当館の利用を通じて利用者自らが学びを深めていくことができる施設である。日比谷図書文化館は、従来の図書館の枠にとらわれない新たな知の拠点を目指している。

「図書館かわいいプロジェクト」
―もっとみんなに愛される「かわいい図書館」を目指して― 
【 p.36-39 】

図書館かわいいプロジェクト

「図書館をかわいくしたい!」そんな思いから始まったプロジェクト、「図書館かわいいプロジェクト」の活動を紹介します。このプロジェクトは現在、図書館がもっと多くの人に愛されるかわいい存在になることを目指し、ウェブマガジン「Libkawaii 図書館からおでかけはじめよう。」(http://libkawaii.com/)や企業とのコラボレーション企画を展開しています。本稿では、プロジェクト発足のきっかけや当初の企画、現在に至るまでのプロジェクトメンバーによる検討の様子なども含め、プロジェクト発足から今後の展望までをまとめました。

談話室 第28回
本と人をつなげる参加型のしおりKumori―図書館での小さな企画 【 p.40-43 】

渡辺ゆきの(Kumori)

ごぞんじですか?
リポジトリシステムWEKO 【 p.44-48 】

山地一禎(国立情報学研究所)

専門図書館を見る
神田外語大学附属図書館 【 p.49-52 】
小林磨理恵(日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館)

私の仕事、わたしの一日 第6回
流鏑馬・衣紋・マジック 【 p.53-55 】
鈴木眞弓(元国立国会図書館支部宮内庁図書館)

資料紹介
専門図書館の人的資源管理 【 p.56-57 】
高山正也(国立公文書館 館長)

明朝活字の美しさ:日本語をあらわす文字言語の歴史 【 p.57-58 】
宗村泉(印刷博物館)

図書館空間のデザイン:
デジタル化社会の知の蓄積 【 p.58-59 】
関司(東日本建設業保証㈱建設産業図書館 事務局長)、江口知秀(東日本建設業保証㈱建設産業図書館 学芸員)

事務局だより 【 p.60-62 】

平成24年度総会・全国研究集会の日程 【 p.63-64 】