258号特集 図書館界以外の方に訊くⅡ-ホスピタリティ
特集「図書館界以外の方に訊くⅡ-ホスピタリティ」にあたり 【p.1】
おもてなし「ホスピタリティ」【 p.2-7】
四方啓暉(大手前大学総合文化学部 教授)
最近「おもてなし(ホスピタリティ)」と云う言葉を耳にすることが多くなりました。しかしその言葉の受け取り方は様々な分野で多少異なる事もあるかと思います。
まずはなぜこの数年改めてよく耳にするようになったのか、その理由の一端をご紹介します。そしてどのように理解され取り組まれているかを身近な例として大学の教育現場での近況を紹介します。さらに今幅広い業界において大切なキーワードとして真剣に取り組まれているビジネスの世界でのホスピタリティへの取り組み例をお話ししたいと思います。特によくつかわれるようになった「顧客満足」・「社員満足」につきその意味と内容、具体的な取り組み方を紹介します。併せて実際に取り組む際意外とおろそかにされがちな問題点につき簡単に述べたいと思います。
利用者のニーズを越え、圧倒的な結果が生まれる図書館づくり
~ビジネスマナーと、利用者の思いや発想を引き出すコミュニケーション~【 p.8-15 】
藤田菜穂子(一般社団法人マナー教育推進協会、クリアコミュニケーション)
ビジネスマナーとは、仕事において相手を思いやる心を形にしたものであり、図書館職員のマナーの伴った言動により利用者に敬意を伝え、信頼関係の基礎を築くことができる。さらに双方向のコミュニケーションを通じて、利用者の声にならないニーズを掴み貢献すること。利用者にとって「この図書館に来ると仕事がはかどる」「あなたと話すとインスピレーションがわく」図書館になりうる。
本稿では図書館のシチュエーションに合わせたビジネスマナーの基本。利用者に依頼やお断りをする際に相手の心に届きやすくなる伝え方。パートナーシップが生まれるコミュニケーションの5段階。利用者の発想やバイタリティを生み出すコーチング的なかかわりを紹介。
利用者により貢献する図書館づくり。利用者とのコミュニケーションを通じて図書館職員がよりやりがいを感じる働き方を提案する。
話し方は心と技【 p.16-22 】
香月よう子(きてきて先生プロジェクト代表・フリーアナウンサー)
流ちょうによどみなく話すことだけが上手な話し方でしょうか?心の入っていない話し方は、ただ間違えずに話しているだけで相手に伝わりません。相手の聞きたいことを理解し、自分の持っている知識の中から自分の伝えたいことを相手に伝わるように話す。つまり「コミュニケーションする」ということについて「心=伝えたいこと、技=伝え方」に分けて考えます。専門図書館で働く自分の専門分野の「好き」や「面白さ」を探し、その情報を常にアップデートすること。そして、言葉、質問力、声、表情、目線、位置などの技を使って効果的にコミュニケーションする方法をお伝えします。コミュニケーションは誰でも実践しながら上達することができるもの。日常の実践の積み重ねがコミュニケーション上手を育てます。コミュニケーションのうまくいっている職場は、あなたも外部の人にとっても楽しい場です。あなたの専門分野を自分の言葉で相手に伝えてください。
インタビューの方法/新聞記者の体験から~キーワードは「予習」「漫才」「脇道」~ 【 p.23-28 】
前田史郎(朝日新聞社 論説委員)
新聞記者は人から話を聞き、それを文字にして伝えるのが仕事だ。だが、何年この稼業をやっても決定版的なインタビュー方法にたどりつくことはない。相手の立場や性格、取材テーマによって難易度も違うし、自分も相手に合わせて押したり引いたりし、質問の手法もかえなければならないからだ。
しかし最低限これだけを心掛ければ失敗はしない、と胸に秘めている「心得」が3つある。きっちりと予習してから人に会うこと。先を焦らず、相手とマラソンで伴走するようにネタを振りながら話を進めること。そして、話が脱線して脇道にそれた時こそ、いい話を聞き逃さないことだ。
怒鳴られ、バカにされることがあっても、これだけ心掛ければ時には相手の体験に胸を打たれ、ともに涙を流し、感動を共有できる。だからこそこの仕事は素晴らしいと思う。30年の記者経験で積み上げた数々の失敗談をおりまぜながら、人から話を聞くことの難しさと面白さを考えたい。
美術館に人を惹きつけ、物語体験を生み出すために 【 p.29-34 】
白濱恵里子(森美術館学芸部パブリックプログラム エデュケーター/チームリーダー)
今年、開館10周年を迎える東京・六本木の森美術館は、現代性と国際性をミッションに掲げ、先端的な現代アートを数多く紹介してきた。国際化、複雑化する現代アートを人々に伝えるためには、展覧会作りにとどまらない多様なアプローチが必要とされてきている。来館者に気持ちよく「ハレ(非日常)」の物語を紡いで頂くための鍵を握るであろう、付加価値創造の試み、例えば開館時間の工夫や広報活動、教育普及活動、ブックラウンジなどに触れながら、人と美術館の関係について考察する。
院内交番奮闘記―クレーム対応あれこれ― 【 p.35-41 】
横内昭光(学校法人慈恵大学 法人事務局総務部渉外室顧問)
学校法人慈恵大学では、「院内交番」と呼ばれる渉外室に、現在、4名の警察OBが勤務し、4つの附属病院における暴力やクレーム、教職員からのプライベートな相談に対応し、教職員が安全に働くことのできる環境づくりに携わっている。また、対外的な活動として、他病院との情報交換を目的として、病院で働く警察OBの全国組織である「HKO会」を開始した。
本稿では、病院で生じるトラブルとそれらへの対応の例を紹介する。暴力、悪質クレームに対しては毅然とした態度をとること、またトラブル予防のためには、目を見て話すことにより、誠意、誠実を表すことが基本であると考える。
相手の身になって考えるという心遣いが必要なことは、公共的な施設では共通なことであると思われるので、本稿にて紹介したコミュニケーションスキルを図書館におけるクレーム対応において参考にしていただけると望外のよろこびである。
談話室 第32回
絵本と人を結ぶ いたばしボローニャ子ども絵本館 【 p.42-46 】
中田祥子(東京都板橋区教育委員会中央図書館 いたばしボローニャ子ども絵本館)
ごぞんじですか?機関誌「専門図書館」ができるまで 【 p.47-51 】
会員サービス委員会機関誌グループ
専門図書館を見る公益財団法人日本交通公社 旅の図書館 【 p.52-58 】
權田真幸((独)日本原子力研究開発機構 研究技術情報部 情報メディア管理課)
私の仕事、わたしの一日 第10回スペース、足りていますか? 【 p.59-60 】
小島恵美子(日本医師会医学図書館)
資料紹介
だから図書館めぐりはやめられない:
元塩尻市立図書館長のアンソロジー
図書館はラビリンス:
だから図書館めぐりはやめられない…part2 【 p.61-62 】
芦川肇(東京都足立区立中央図書館)
雑誌メディアの文化史:変貌する戦後パラダイム 【 p.62-63 】
大庭千代子((財)石川文化事業財団お茶の水図書館)
第14回図書館総合展フォーラムこれからの専門図書館、情報専門家の仕事【 p.64-70 】
Brent Mai、澤田裕子訳((独)日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館)
第14回図書館総合展フォーラム
専門図書館協議会60年の歩みと将来【 p.70-75 】
中村利雄(専門図書館協議会理事長)