259号特集 働きながら学ぶⅢ 専門図書館に役立つ資格・検定


特集「働きながら学ぶⅢ 専門図書館に役立つ資格・検定」にあたり 【p.1】

働きながらの学びを学ぶ【 p.2-5】

小田光宏(青山学院大学教育人間科学部)
図書館員の働きながらの学びに価値があることを前提に、その論点と課題を提示する。
論点に関しては、5W1Hの観点から検討している。「いつ」では、就業、生活上の時間、時間設定の三
つが基軸となること、「どこ」では、職場の内と外、学びの場を特定化した場合とそうでない場合との
二つがあることを指摘している。「誰」では、図書館員とともにそれを支援する者の存在を強調し、
「何」では、修得すべき技能の体系化がなされてないことに触れ、専門図書館として
の特性からも、事例に目を配ることの必要性を示している。「なぜ」では、目標と目的を意識し
た学びとすることの重要性を示唆し、「どのように」では、新たな手法を用いた学びの存在を明
示している。課題に関しては、就業と学習を一体化させた環境を整えること、図書館界として図
書館員の学びを体系化すること、学びに関する研究を進展させて言説からの脱却を図ることを主
張している。

図書館情報学検定試験―図書館情報専門職員養成の今後―【 p.6-9 】

須永和之(國學院大學)
図書館情報学検定試験はLIPER提言により、2007年度から準備試験が開始されて、2010年度か
らは公開制となった。2012年度は5 カ所の公開会場と2 カ所の日公開会場(大学)で実施された。
試験は五者択一のマークシート形式で、図書館情報学の8 分野から出題される。これまで日本の
図書館職員養成は司書・司書教諭講習とそれを基盤とした大学の司書・司書教諭課程であった。
平成24年度からは大学の司書課程が24単位へ増加したが、理想とする北米の大学院レベルの養成
課程には程遠い。また司書講習・司書課程は公共図書館の専門職員養成であり、すべての館種の
職員養成ではない。今後は専門的な資料の知識を求められる専門図書館の職員に適応した養成課
程と、統合的・体系的な検定試験と専門図書館の主題分野に特化した検定試験を設定することが
必要であろう。

IAAL大学図書館業務実務能力認定試験について【 p.10-14 】

NPO法人大学図書館支援機構(IAAL)
IAAL大学図書館業務実務能力認定試験は、図書館の実務能力の指標となることを目指して、
2009年5 月から年2 回定期的に実施しています。ここでは、NPO法人大学図書館支援機構がこ
の試験を開始した理由とその必要性を説明し、現在の実施状況を示し、今後の方向を考えます。

IAAL大学図書館業務実務能力認定試験を受験して 【 p.15-17 】

磯崎みつよ(二松学舎大学附属図書館・丸善株式会社)
筆者は、非正規雇用の司書ではあるが、大学図書館で働き10年近くキャリアを積んだ。そのキ
ャリアを積む過程で認定試験と出会い、自己研鑽の一つで受験をしたことが自発的なキャリア形
成を促した。試験対策としては、職場でのOJTのほかインターネットを活用したOff-JTで復習
を重ねた。科目を問わず参考文献を読込むことで、基本的な事項をおさえ体系的な学び直しにつ
ながった。また知識やスキルの客観的な評価を受けたことで自信が生まれ、更に仕事に対するモ
チベーションの維持やキャリアを見つめ直す良い機会となった。今後は、一個人として知識やス
キルにより磨きをかけていくことと並行して、中堅スタッフとして、認定試験を人材育成やマネ
ジメントの場で活かしたいと考えている。認定試験の定着には時間がかかるかもしれないが、評
価を受けたものが業務に携わることで、大学図書館業務の品質を維持し、専門職としての位置付
けを高め、そして非正規雇用も含めた処遇改善につながることを期待している。

専門図書館員に役立つ資格・検定:『情報検索能力試験』~めざせ、インフォプロ!~ 【 p.18-22 】

河塚幸子(一般社団法人情報科学技術協会 試験実施委員会)
電子化が進む図書館において、図書館員はデータベースをはじめ様々な電子情報を使いこなす
スキルを身につけることが求められる。本稿では、「情報検索能力試験制度」について、試験の
歩み、試験の概要、図書館関係者の受験の現状と試験に合格するためのアプローチ、資格取得に
よる効能を紹介した。

情報検索能力試験について 【 p.23-26 】

芳賀みのり(フリーランスサーチャー)
インフォプロ・サーチャーの1 人、また、合格者の1 人としての観点から、インフォプロ・サ
ーチャーの関門とされている情報検索能力試験の内容、その対策等について記した。どのような
問題が出題されているかを簡単に参照できるよう、過去問題の内容(専門分野問題は一部)を試験
が実施された年ごとに表にまとめた。また、インフォプロ・サーチャーの展望についての私見を
述べた。

特定非営利活動法人日本医学図書館協会認定資格『ヘルスサイエンス情報専門員』 【 p.27-30 】

城山泰彦(特定非営利活動法人日本医学図書館協会 認定資格運営委員会委員長、順天堂大学図書館)
特定非営利活動法人日本医学図書館協会における認定資格制度は、2000年に制度創設が検討さ
れたことに始まる。2003年に認定資格運営委員会が新設され、本委員会と中央事務局が担当して
運営している。翌2004年1 月に第1 回募集を行い、同年4 月に第1 回認定を行った。2014年1 月
に創設10年を迎える予定であり、国内の図書館系の資格では最も長い歴史を持つ制度である。私
たちが対象とするヘルスサイエンス分野は医学を中心に関連領域に広くまたがっており、認定資
格「ヘルスサイエンス情報専門員」は、関連領域を主題とする図書館専門職を認定する制度を目
指している。2008年から専門職能力開発プログラムを検討しており、プログラム構築やカリキュ
ラム・シラバス等の具体的な検討を進めている。ヘルスサイエンス図書館員が身につけるべき知
識とスキルを定義しており、認定資格「ヘルスサイエンス情報専門員」と密接に関連させた制度
移行を予定している。

「ヘルスサイエンス情報専門員(上級)」を取得して 【 p.31-35 】

村瀬菜都子(ラクオリア創薬株式会社 情報技術部)
新しい仕事を始める時にいくつかの資格や検定を取得しました。興味を持って取り組める内容
のものを選択しましたので、耳慣れない言葉や言葉としては知っていても意味を理解していなか
った言葉に悪戦苦闘しながらも知識を増やしていきました。
並行して「ヘルスサイエンス情報専門員」を上級資格までを取得しました。これは今までの資
格や検定とはひと味違った難しさがありました。知識を増やすことだけでなく行動を起こすこと
が必要になってくるからです。それは私にとてもよい機会を与えてくれました。
私の経験がこれから「ヘルスサイエンス情報専門員(上級)」を目指す方にとって少しでも参考
となれば幸甚です。

専門図書館員に役立つICT関連検定を通じた情報技術の習得について 【 p.36-41 】

水島章広(産業能率大学経営学部)
図書館業務を支えるICTの進展は著しい。おりしも、大学でおこなわれている図書館司書課程
の内容が2012年度に変わり、そのなかでICTの分野が大きく広まった。これは現場を支える図書
館員の業務の広がりが背景にあると考えられる。
他方、ICTに関する知識や技能に対し様々な検定試験が実施されている。仕事をしながらICT
を学ぶには、検定試験という目標があるとすすむことであろう。
本稿では、ICTに関する検定試験のなかから図書館員に関連しそうなものを選択して紹介し、
これからの業務にICTを一層役立ててもらうことをねらいとした。

デジタル・アーキビスト資格 【 p.42-46 】

谷口知司(京都橘大学現代ビジネス学部教授、日本デジタル・アーキビスト資格認定機構資格委員長)
デジタルアーカイブなどの、資料や文化活動の情報化の担当者には、ICT技術を基盤とし、情
報の価値が評価できる素養と、何をどのように記録・管理・流通するかを判断する能力、さらに
知的財産権、肖像権やプライバシーなどへの対処ができる知識と能力が要求されている。こうし
た文化資料の情報化に対して確かな知識と技術を持つ専門職が必要とされるなか、この要請に応
えるためにNPO法人日本デジタル・アーキビスト資格認定機構によるデジタル・アーキビスト
資格が創設され人材の養成が行われている。本稿では、デジタル・アーキビストに必要とされる
知識や能力と、その資格制度の概要についてふれるとともに、養成のためのカリキュラム、さら
には現職者のための再教育による資格付与システムや、現在検討されている有資格者に対する継
続教育制度について論述した。

デジタル・アーキビストの資格取得と実務経験から 【 p.47-50 】

田代匠子(NHK放送文化研究所・アーキビスト(嘱託))
「デジタル・アーカイブ」という言葉は、最近、よく知られるようになってきた言葉である。
しかし専門職として「デジタル・アーキビスト」というものが存在することは、それほど知られ
ていない。本稿では、私がなぜ、この「デジタル・アーキビスト」の資格を取得しようと思った
のか、また、この資格を業務の中で、どう活かしているのか、ということについてまとめた。前
半では「デジタル・アーキビスト」資格取得試験に関することに触れ、学習の進め方、試験対策
などを紹介。後半では、資格取得後の日々の実務において、講習会で学んだことをどう活かして
いるのか、史料群の階層構造、メタデータの構成、デジタル撮影方法など、その実例を挙げた。
最後に、学んだことによって見えてきた課題である、利用者に必要とされるデジタル・アーカイ
ブの構築を目指すために、今後の自分の目標として、今、考えていることをまとめた。

「文化財IPMコーディネータ」資格について 【 p.51-54 】

三浦定俊(公益財団法人文化財虫害研究所 理事長)

文化財IPMは、図書館・博物館・美術館などが所蔵する資料を、虫やカビなどの被害から守るための新しい生物被害防除方法である。ここでは文化財IPMを進めるために文化財虫害研究所で制定した、文化財IPMコーディネータ資格について解説している。はじめに文化財IPMとはどのようなもので、どんな経緯で誕生したかについて述べている。IPMの作業は、回避・遮断・発見・対処・復帰という一連の流れで構成されていて、生物被害防除の効果を上げるためには、各段階の作業をIPMの目的に沿ってしっかりと行う必要がある。そのため文化財IPMコーディネータ資格は、作業に関与する館職員や外部の専門家、空調管理業者、清掃業者、防除処理業者などが、必要なときにはお互いに相談しながら、それぞれの立場で作業を適切に管理し、文化財IPMを円滑に推進できる人であることを認定するためにつくられた。その他、資格の対象者や必要な知識、取得方法について解説している。

知的財産管理検定を受験して 【 p.55-57 】

新見裕子((株)日水コン 情報企画部)
企業の情報センターの人間が、自分の新たな知識の軸になるものを持つために知財検定を受験した。社会人の受験勉強の方法の1 つとして、目標がはっきりすること、集中して効果的に勉強できることから、講座を受講し、復習、問題解き、予習を繰り返し、受検勉強を行なった。資格取得後は、業務に直接関わるとうより、司書、図書館関連とは違う分野が加わり、自分を深めることに役立っている。

文書情報管理士1級 【 p.58-60 】

石川清美(株式会社ニチマイ 営業部企画開発課)
オフィスワーカーであれば仕事上、必ず文書に関わります。「文書情報管理士」資格取得に向けて準備をしているときに、文書に関することを意外に知らないことに気づきました。この資格は、文書のライフサイクルに基づいた取り扱い、文書に関する法令及び標準規格、デジタルデータやマイクロフィルムについての技術などについての知識に関するものです。その概要、取得の経緯、仕事に役立っていることなどを紹介いたします。

ごぞんじですか?第87回「すべての本棚を図書館に」を目指すWebサービス、リブライズで広がるコミュニティ図書館の輪【 p.61-66 】

地藏真作

専門図書館を見る 第209回株式会社乃村工藝社大阪事業所・情報資料室 【 p.67-71 】

福岡小百合(大阪商工会議所 中小企業振興部 経営相談室)

私の仕事、わたしの一日 第11回
私の30年―私の平日 【 p.72-73 】

山崎三枝(公益財団法人福岡アジア都市研究所 都市政策資料室 司書)

資料紹介
学校図書館から教育を変えるⅡ:学校図書館の力を活かす 【 p.74-75 】

高橋恵美子(法政大学 兼任講師)

図書館情報学 【 p.75-76 】

日置将之(大阪府立中央図書館)

第14回図書館総合展フォーラム
これからの専門図書館、情報専門家の仕事【 p.64-70 】

Brent Mai、澤田裕子訳((独)日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館)

平成25年度全国研究集会の日程【 p.77-79 】

事務局だより 【 p.80-83 】