261号特集 全国研究集会「10年後の図書館員のために、今できること、明日できること」

情報技術は文化を目指す―その進化を考える― 【p.12-17】原島 博(東京大学 名誉教授)

コンピュータに代表される情報メディア技術は、科学の情報化、ビジネスの情報化、個人の情報化、社会の情報化を経て、いまや文化の情報化を目指している。ここでは、その進化の歴史を振り返り、あわせてこれから目指すべき方向を探ってみたい。

『よきモノづくり』をサポートする企業図書館の取り組み【 p.18-22】大石裕子(花王株式会社 研究業務推進グループ 研究総務)

担当者の小さな気づきや利用者である研究員の意見を契機に、新着図書案内から利用者アンケートの実施、そして新着図書コーナーの設置へと段階的に企業図書館のサービス改善を行なった一例を紹介する。

会員制ライブラリー「BIZCOLI」の挑戦【 p.23-28 】岡本 洋幸(公益財団法人九州経済調査協会 事業開発部 主任研究員)

会員制ライブラリー「BIZCOLI」(読み方:ビズコリ)は、「人がつながる、アイデアが生まれる」をコンセプトとして、2012年4月に福岡市にオープン。2012年度の利用者数は前年度の約10倍、入会企業数は3倍を超えました。BIZCOLIに込めた想い、機能、集客戦略など、ドラマティックな1年間をご紹介いたします。

医学に特化したディスカバリー・サービス構想について【 p.29-33 児玉閲(東邦大学医学メディアセンター)

主題が特化した機関でのディスカバリー・サービス事例として、東邦大学メディアセンターでのSummon導入経緯と、サービスを向上させるための機能案を示した。このサービスをよりよいツールにするため、図書館が利用者ニーズを積極的に提案することが望まれる。

デジタルアーカイブの利用あれこれ【 p.34-39 】水野翔彦(国立国会図書館関西館)

全国の文化施設で構築が進むデジタルアーカイブだが、その利用に関しては課題が多い。本稿ではデジタル化やインターネットによる配信によるメリットを踏まえつつ、電子図書館事業に携わる筆者が見てきた様々な利用例を紹介する。

松竹大谷図書館の試み~クラウドファンディング(インターネットを利用した支援募集)~【 p.40-45 】須貝弥生(公益財団法人松竹大谷図書館 事務局)

演劇・映画専門の私立図書館である松竹大谷図書館は、昨年秋にインターネットを利用した支
援募集“クラウドファンディング”によって、図書館の運営資金の募集を行った。その経緯と結果、今後の課題などを紹介する。

組織運営に情報ライブラリーを活かす【 p.46-51 】木下みゆき(一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団(大阪府立男女共同参画・青少年センター))

当ライブラリーはドーンセンターという総合機能を持った施設の一部であり、施設あるいは組織の存続がライブラリー存続の前提である。そのため、様々な状況変化の中、「組織の中で図書館がいかにして生き残るか」ではなく、「組織が生き残るために図書館及び図書館専門職員の存在をどう活かすか」とう発想転換をしてきた。

著作権法改正の概要と最近の動向【 p.52-57 】山中弘美(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長)

平成25年1 月1 日(一部については、平成24年10月1 日)から施行された、「著作権法の一部を改正する法律」(24年改正)の概要と、第13期文化審議会著作権分科会に設置された各小委員会の検討課題等について説明する。

企業内における著作物利用の問題点【 p.58-63 】増田雅史(森・濱田松本法律事務所 弁護士)

企業内における著作物利用という観点から、①企業内における文献等の複写・利用、②従業員による創作行為における第三者著作物の利用、③企業が保管する文献等の第三者への貸与、④書籍の表紙画像の配布や送信、⑤著作者等との交渉、の5 つの場面について問題点を解説する。

情報科学技術協会における著作権対応と医薬領域における著作物の利活用【 p.64-69 】鈴木博道(一般財団法人国際医学情報センター、一般社団法人情報科学技術協会著作権問題委員会委員長)

情報科学技術協会(以下「INFOSTA」と称す)複写権問題対策委員会等では、会員の声を代表して著作権に関する様々な意見を表明し、管理事業団体との交渉にもあたってきた。また、勤務先の国際医学情報センターは、医学分野の専門センターとして各種の医学医療情報サービスを行っている。STM(Science, Technology & Medicine)領域の情報担当部門実務者等中心のINFOSTAと医学専門情報センターでの経験とから、実体験に基づく著作権問題を紹介したい。

韓国における専門図書館の司書養成とスキル向上について【 p.70-77 】金相俊(韓国生命工学研究院 図書館)

韓国の専門図書館の理解のため、図書館、司書、資料、予算、サービス、利用について紹介し、続いて、JSLAと同様の組織であるKSLAおよびKMLAを紹介し、その背景を述べることにします。続いて、専門図書館の運営環境を理解していただくために、関連法律と専門図書館に関する主要な政策について述べ、司書採用の現状について紹介します。本格的な専門図書館の司書養成については、司書資格要件、養成教育制度、養成教育体系に関して具体的に述べます。次に、専門図書館員のスキル向上と業務開発の事例について、専門図書館の現場におけるスキル向上に対する要望や意見、再教育の現状を紹介し、多様なサービスと業務開発事例を紹介します。以上のような内容でお話し、最後に韓国専門図書館の今後の方向と課題についてもお話します。

日本における専門図書館を取り巻く状況と専門図書館員に求められる専門性【 p.78-81 】山﨑久道(中央大学文学部教授、博士(情報科学)、専門図書館協議会顧問)

長期にわたる経済停滞もあって、わが国の専門図書館を取り巻く状況は、大変厳しいものがある。一方、情報化はその歩みを速め、インターネットは一般の人々にとっての日常的な情報収集・情報伝達手段として完全に定着している。専門図書館が守備範囲としてきた経営管理や研究開発に関わる分野の情報についても、こうした現象が起きている。そうした環境の中で、専門図書館員が持つべき専門性とは、いかなるものなのであろうか。ここではとりあえず、(1)情報資源と利用者の間を繋ぐintermediary(仲介者)の機能として、情報の探索・評価・入手についての知識や実践的能力が求められる、(2)利用者や研究者の知識構造と競合する単純な主題知識よりも、「資料と資料の間の関係」(資料や情報の相対的特徴)についての見解や知識における専門家であることが求められる、(3)問題解決型・課題発掘型の情報収集や情報評価という要請に対応して、知識の文献上の分布状況に対する俯瞰的視野や問題解決に資する学際的情報把握能力が求められる、の3 点を挙げた。

平成25年度全国研究集会に参加して 【 p.83-96 】

第1分科会を中心に/秋山泰律((株)ブリヂストン 中央研究所)
第2分科会を中心に/平山陽菜((一財)日本医薬情報センター)
第3分科会を中心に/稲垣玲香((公財)あいち男女共同参画財団)
第4分科会を中心に/阿部麻里(凸版印刷(株) 印刷博物館)
第5分科会を中心に/橋本由希子(米国大使館レファレンス資料室)
第6分科会を中心に/古橋実知子((公財)名古屋まちづくり公社名古屋都市センターまちづくりライブラリー)
第6分科会を中心に/中野将美((公社)中国地方総合研究センター)

事務局だより 【 p.97-99 】