専門図書館271号(2015年5月)特集:企業図書館のいま~生き残りのヒントを探して(詳細)

企業内専門図書館の現状とこれから
-図書館運営と利用者サービスをもとに-【p.2-8】
青柳 英治(明治大学文学部)
 本稿は、企業図書館の現状を把握することによって、企業図書館員が、今後の図書館運営と利用者サービスのあり方を検討するにあたり、参考となり得る方向を提示することを目的とする。そのために、まず、専門図書館協議会が発行する『専門情報機関総覧』の2015年版をもとに、企業図書館の現状を整理した。次に、現状を踏まえて、これからの企業図書館を検討する際に、参考となり得る四つの方向を提示した。具体的には、(1)資料の提供から情報の提供、(2)意思決定者へのアピール、(3)利用者の近くでサービス提供、(4)職域間での連携とネットワークの構築である。さらに、これらの方向を実現するために、専図協主催による研修等の受講を中心とした専門図書館員の人材育成を進めることの重要性を指摘した。
ひらめきを誘発する図書室づくり
~情報の発信・共有、そしてアイディア創出のために【p.9-14】
成澤 幸子(旭硝子(株)AGC図書室)
 AGC図書室は旭硝子に設置された唯一の図書室である。電子ジャーナルやインターネットの普及による利用者の減少、固定化に加え、システム面、場(設備と空間)の老朽化などの課題を抱えていた。社会情勢の変化とともに、新しいナレッジを発生させることを意図した空間およびシステム作りを目指し、2010年図書館システムの更改と図書室リニューアルを行った事例を紹介する。
挑戦し続ける企業図書室
アステラス製薬株式会社の10年を振り返って【p.15-20】
隈 千枝(アステラスビジネスサービス(株)情報ナビゲーション室)
 アステラス製薬(株)は発足から10周年を迎える。企業の合併で生じた図書室の再編に伴う所蔵方針の策定や蔵書の再構築などの取り組み、および電子ジャーナルについて年々変化する課題への対策過程とグローバルへの展開事例を報告した。また利用促進のための広報活動や委員会制度など図書室のサービスの概要と今後の展望について述べた。
紙から電子化へ NTT京阪奈図書館16年の取り組み【p.21-26】萩原小百合(NTT京阪奈図書館)
 NTT R&D図書館の5番目の図書館(そのうち1館は現在閉鎖している)としてNTT京阪奈図書館が開館して今年で17年目である。ちょうど開館した頃から世の中の電子化が進み、発足時は紙の資料のみの蔵書であったが、現在新規購読(契約)のほとんどが電子版での資料となり、徐々にアーカイブ(バックナンバー)も電子版のみとなってきている。利用者へ提供する文献も図書館で入手して提供することから、利用者の自席でダウンロードするスタイルに変化した。NTT図書館の他地区と協力しながら紙から電子版へと変化していった過程や、電子化により来館者が減少したことによる歯止めをかけるための取り組みを紹介する。
活用される図書館になるために―家具計画からみた図書館づくり―【p.27-32】
瀬良垣 守人(キハラ(株)マーケティング部設計室)
家具計画からみた図書館づくりを「距離感」「調和」「安全安心」をキーワードに考察する。距離感では、人の意識への作用や数値的な解決策を提示し、調和では、家具の色彩、素材、形状が持つイメージ例を相対的に一覧する。全ての基盤となる安全安心では、簡易ながら地震対策チェックリストを掲載し、安全意識の向上を喚起する。以上のような試みが、利用者にどのように伝わり受け止められ、さらなる関わりを生み出せるかは、人の力に期待されるところである。
企業図書館2025
~図書館員に求められる役割の変化そして期待【p.33-39】
菊池 健司((株)日本能率協会総合研究所
マーケティング・データ・バンク)
企業図書館は非常に重要な役割を担うセクションだが、近年、規模の縮小あるいは休眠化といった事態に見舞われている。かつては業界を代表する図書館員が、レファレンスはもちろんのこと、調査の手法を社員にレクチャーし、調査クオリティが高く保たれていた。図書館機能を有していない機関では、調査手法が十分伝承されておらず、相対的に調査能力の低下につながっているという仮説を持っている。そうした環境下において、企業図書館は大きな可能性を秘めている。今改めて注目に値する存在になってきていると感じる。様々なビジネスアイデアの創造の場として、アドバイスを受けられる場としての機能は重要である。これからの企業図書館員に求められる能力は大きく以下の2点。①多くの業界で何が起きているのかを把握しておくこと、②常に未来を予測する発想を持っておくこと。今後の企業図書館の展開に大いに期待している。
時空を超えた地図の旅へ「ゼンリンバーチャルミュージアム」について【p.40-43】山村 尚志((株)ゼンリン )
千葉大学アカデミックリンク/附属図書館本館【p.44-48 】小玉直子(シャープ(株)研究開発本部)
「知のDNAを繋ぐ」【p.49-50】秋山 泰律((株)ブリヂストン 中央研究所)
『図書館をつくる』【p.51-52】多賀谷 津也子(大阪芸術大学図書館)
『未来の図書館、はじめませんか?』【p.52-53】井出 明(追手門学院大学経営学部)
専門図書館員のための認定資格制度設立に向けて(5)
:聞き取り調査の実施と今後の課題【p.54-56】
運営委員会認定資格検討小委員会