専門図書館272号(2015年7月)特集:どこでも図書館-図書館を作る(詳細)

特集「どこでも図書館-図書館を作る-」にあたり 【p.1】
まちライブラリー活動を通して見えてくる、マイクロ・ライブラリー(小さな私設図書館)の現況と展望 【p.2-8】
礒井 純充 (まちライブラリー提唱者)
まちライブラリーとは、メッセージを付けた本を寄贈し、カフェ、ギャラリー、自宅、オフィス、お寺、病院、商店街などまちのあちこちの本棚において、お互いに貸し借りをし、さらにメッセージを付け足しながら、本を通じて人とつながることを目的にした活動である。まちライブラリーは、2011年に誕生し、2015年5月現在全国で170ヶ所を越えるまでに広がった。その誕生の背景、仕組み、誕生期のエピソード、全国で展開されている数々の事例を紹介する。
また2年前に誕生した大阪府立大学、本年4月に誕生した大型商業施設や立命館大学の拠点型のまちライブラリー3館の概要や利用者像の比較、巣箱型まちライブラリーなどの新たな試みと大阪を中心に私設図書館、公共・大学図書館、書店が垣根を越えて実施した「まちライブラリー大阪ブックフェスタ+2015」の概要についても報告し、これらの活動を通じて著者自らが考える小さな図書館の社会的な広がりと今後の展望について記述する。
小規模分散型図書館で地域の持続的発展を 【p.9-15】
岡 直樹(情報ステーション)
情報ステーションは、誰でも無料で利用できる民設民営の地域密着型小規模図書館を運営するまちづくりNPO法人である。千葉県船橋市を中心に活動が始まり、2006年に1 号店の「ふなばし駅前図書館」を開設、2015年6 月までには47館の開設に至った。本稿ではこれまでの活動と、図書館を創ることで進めてきた“まちづくり”について紹介する。また、永らく“官”が担ってきた“公共”を“民”が主体的に担っていく事による、今後の可能性について報告する。
ゼロから図書館を作る
カンボジア難民キャンプと震災後の東日本での移動図書館【p.16-23】
鎌倉 幸子(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会)
シャンティ国際ボランティア会は1981年の設立以降、内戦、紛争、貧困で本が不足していたり、教育を受ける機会がなかった人々がいるカンボジアやアフガニスタンなどアジアの国々で図書館事業を行なっている。また阪神・淡路大震災発生後は団体内に緊急救援室を置き、国内外での緊急救援活動を行っている。海外での図書館活動また緊急救援の経験を生かし東日本大震災の被災地で「走れ東北!移動図書館プロジェクト」を立ち上げた。本稿ではゼロの状況から図書館のプロジェクトをどのように立ち上げるのか、何が必要とされるのかを述べている。
すべての本棚を図書館に:カフェから生まれたリブライズ 【p.24-31】
河村 奨(下北沢オープンソースCafe)
東京・世田谷区のカフェ兼図書室から「リブライズ~すべての本棚を図書館に~」が生まれた背景を、コワーキングとオープンソースという文脈から説明し、蔵書の公開がコミュニティに何をもたらすのかについて概観する。公共図書館のそれとはことなり、街の本棚は表現手段であり、コミュニティの特性をあらわす鏡たりうる。「市民蔵書」が一部でも公開されることで、隣人間のコミュニケーションは円滑になるだろう。現在、これらのマイクロライブラリーは、リブライズに登録された場所だけで800箇所を超え、全国に基盤をつくりつつある。本論では、マイクロライブラリーで始まっている新しい取り組みとして、書籍販売やブッククラブ、「ものライブラリー」についても触れる。本の貸出という機能面に目が行きがちなリブラ
イズについて、「市民蔵書」という視点からその意義を紐解いていきたい。
NDC10版の変わったところ【p.32-36】大曲 俊雄(日本図書館協会分類委員会)
『デジタルアーカイブの最前線』【p.37-38】高井 正三(富山大学総合情報基盤センター)
専門図書館におけるマイクロフィルムの現状【p.39-42】矢野 正隆(東京大学大学院経済学研究科)
専門図書館員のための認定資格制度設立に向けて(6)
:座談会の開催と制度案の確定へ【p.43-47】運営委員会認定資格検討小委員会