専門図書館273号(2015年9月)特集:全国研究集会 未来に続く専門図書館を目指して(詳細)

記念講演:ピケティ『21世紀の資本』概要と需要、そして環境づくり 【p13-17】
山形浩生(翻訳家)
我が国でもベストセラーになったピケティ『21世紀の資本』は地味な格差研究を再興させた画期的な研究書である。それが話題となった背景には、各国の格差への関心がある。同時に格差研究のデータを整え、対話のための環境を造り上げた努力がその影響力継続につながっている。
第1分科会:専門職業人のための情報リテラシー支援
専門職業人のための学術情報リテラシー支援とその効果 【p18-22】
梅澤貴典(中央大学学事課)
専門職業人の支援には公的機関データベースの知識など新たな能力が求められ、複眼的な調査方法を提案できる職員は図書館の存在意義を拡大させる。本稿ではMBA大学院向け講習の事例から、支援発展の可能性を探った。
第2分科会:震災記録とデジタルアーカイブス
東京電力福島第一原子力発電所事故関連情報アーカイブ化への取組について 【p23-27】
米澤稔(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)
東京電力福島第一原子力発電所事故対応の研究開発支援のために行っている、原発事故関連のインターネット上で発信される情報及び学会等における口頭発表情報を収集対象としたアーカイブ化の取り組みの状況、課題等について紹介する。
第2分科会:震災記録とデジタルアーカイブス
国立国会図書館東日本大震災アーカイブひなぎくの取組 【p28-32】
諏訪康子(国立国会図書館電子情報部)
国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(愛称:ひなぎく)の構築における、他機関アーカイブとのメタデータ連携、デジタルコンテンツ収集の取組について報告する。併せて、発生から5年目を迎えた東日本大震災に関する記録保存の現状と課題について言及する。
第3分科会:どうなる著作権、企業図書館の現場から考える
企業内における学術著作権処理の現状と今後 【p33-36】
渡辺喜代美(電気化学工業株式会社)
今年より電子的複製権の対応が必要になった。しかし著作権料は高額で対応するにはハードルが高くなっている。また電子ジャーナルやドキュメントデリバリーサービスなど著作権に関連する契約にも大きく影響してくる。今後も情報収集し、状況把握することで、対応に役立てたい。
第3分科会:どうなる著作権、企業図書館の現場から考える
NECグループ図書館の現状と今後 【p37-40】
新倉弘幸(株式会社日本電気特許技術情報センター)
企業図書館を取り巻く環境が激変している中で、NECグループ社員を対象にしたサービスを展開する企業図書館の事例として、そのサービス内容と著作権に対する取り組み、今後の期待について紹介する。
第3分科会:どうなる著作権、企業図書館の現場から考える
新聞社資料部門の現場から-著作権に関するいくつかのトピックと共に 【p41-45】
藤本亮司(朝日新聞社)
朝日新聞社には日々の取材や社業を支える資料部門が約100年にわたり、存在している。外部非公開の新聞社の資料部門について、その組織や業務、歴史をひもときつつ、著作権に関わる部分のトピックを紹介する。
第4分科会:ビジネスライブラリーのこれから
歴史コミュニケーションと企業資料 【p46-50】
松崎裕子((公財)渋沢栄一記念財団 )
企業がその活動の中で作成または収受し蓄積した記録のうち、組織運営その他さまざまな利用価値のゆえに永続的に保存される企業資料(企業アーカイブズ)は多様な価値と用途をもつものである。近年、コンプライアンス、アカウンタビリティ、透明性、ガバナンスといった規範がグローバルにかつてなく重視されるようになってきている。1990年代以降、ドイツを中心に広まりつつある歴史コミュニケーションと呼ばれる考え方とその実践は、企業資料に含まれる記録情報の社内外への開示、提供、発信によって企業に対する理解を深める取り組みである。日本企業の歴史コミュニケーションに関わる先進的事例として、トヨタ自動車株式会社の「75年史」ウェブ版とキリンホールディングス社ウェブサイト内「キリングループの歴史」も紹介した。
上述のような親組織を取り囲むグローバル環境において、ビジネスライブラリーは新たな付加価値創造に貢献する可能性を持つ。可能性を現実のものにするためには、出所原則を反映し、必要な企業資料を的確に探せる目録を作成することや、メタデータの整備に取り組むことが求められる。この点をモンデリーズ・インターナショナル社の英国現地法人キャドバリーの事例を取り上げて示した。
第4分科会:ビジネスライブラリーのこれから
ゼロから生み出したサービスを広める方法~会員制図書館を3年続けて伝えられること~ 【p51-55】
福岡南海子(ビズライブラリー)
会員制図書館ビズライブラリーは、元非正規の図書館司書が起業して作った図書館です。人脈、資金、資料など何もないところから始めました。今回は、広報の失敗例と成功例を実例を交えて説明することと、図書館司書と起業家を体験して感じることをお伝えします。
第4分科会:ビジネスライブラリーのこれから
専門図書館と公共図書館の連携が生み出すもの
~ビジネス支援の事例を中心に~ 【p56-60】
小林隆志(鳥取県立図書館)
専門図書館と公共図書館の連携が真に実現することが双方の価値を上げることにつながる。このことを理解していただいた上で協力関係を構築するためにここ数年開催を続けてきた情報ナビゲーター交流会について紹介する。専門図書館協議会の皆さんにもその目的を理解していただいた上で多くの皆様に参加していただきたいと思っている。
第5分科会:オープンサイエンスと研究データ公開
オープンサイエンスと研究データのこれから 【p61-64】
林和弘(文部科学省 科学技術・学術政策研究所)
研究論文のオープンアクセスが拡張し、オープンサイエンスの概念で学術情報流通や研究活動そのものが再構成されようとしている。専門図書館においては、図書館としての本質と使命は変わらないものの、能動的な変革によって、研究データを取り扱うなどの発展が期待される。
第5分科会:オープンサイエンスと研究データ公開
東寺百合文書のデジタル化とウェブ公開 【p65-70】
小森浩一(京都府立総合資料館)
京都府立総合資料館は、一昨年、開館50周年を迎えた。52年目になる現在、近隣地に新しい建物を建設中である。一方で、所蔵する国宝・東寺百合文書のデジタル化とウェブ公開を進め、オープンデータによる資料提供を実施するなど、時代の要請にこたえる形での利活用を試みている。ユネスコ記憶遺産登録もめざす東寺百合文書について、これまでの取組とともに資料保存や利用環境の現状を報告する。
第5分科会:オープンサイエンスと研究データ公開
研究データの発信に向けて:『ホームページによる情報発信』の次を考える 【p71-75】
林賢紀(国立研究開発法人国際農林水産業研究センター)
「オープンサイエンス」に必要となる研究データの発信と提供について、「ホームページによる情報発信」との違いを元に概説した。また図書館で可能な取り組みについて検討した。特に、研究データの生産者である研究者との連携が必要になると考える。
第6分科会:専門図書館員のためのディスカバリーサービス講座:活用と課題
ウェブスケールディスカバリをどう扱うか
―図書館と利用者の視点から見えること 【p76-80】
飯野勝則(佛教大学図書館)
近年、着実に普及しつつあるウェブスケールディスカバリについて、その等身大の姿や、導入後に生じる問題点、そして図書館としてどのように扱えば利用者の誤解を防ぎ、効果的な運用ができるのかについて解説する。
第6分科会:専門図書館員のためのディスカバリーサービス講座:活用と課題
ディスカバリーサービスの導入経過と現状。そして可能性 【p81-84】
安東正玄(立命館大学図書館)
大学を取り巻く環境の変化や学術情報のデジタル化の流れ、Googleの高度な検索に慣れたユーザの存在等から次期図書館システムとしてディスカバリーサービスの導入に向けて積極的に取り組んだ。ディスカバリーサービスは完璧な検索システムではないが、日々改善・成長していくシステムである。