専門図書館281号(2017年1月)特集:専門図書館と著作権Ⅱ(詳細)
専門図書館281号(2017年1月)特集:専門図書館と著作権Ⅱ(詳細)
特集「著作権法と専門図書館Ⅱ」にあたり【p1】 |
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図書館をめぐる著作権の制限規定・ 適用除外規定に関する国際的な動向【p2-8】 山本 順一(桃山学院大学経営学部・経営学研究科) |
世界各国の著作権制度は、特定の個性的表現物に関して、その創作者と権利継承者にその排他的利用権を認める一方、学術・技芸の進歩、文化の発展等の公共的利益を確保するために、著作権に関する制限規定、適用除外規定を定めている。知識と情報を化体した著作物の流通と高度化再生産に資するコミュニティ・アンカーとしての図書館は、当然に著作権の制限規定、適用除外規定の対象とされてきた。文化財である所蔵資料の次世代への継承保存のための複製、学術の振興・文化の向上に資する図書館利用者への複製提供、図書館間相互協力のための複製などをその内容とする。それはデジタルの時代になっても変わることはないはずである。関連するWIPOなどの国際的な場における検討、顕著な動きを示しているアメリカおよびイギリスの著作権法改正に向けての取り組みについて論じた。 |
図書館における複製行為のデジタル化と複製主体【p9-15】 塩澤 一洋(政策研究大学院大学客員教授・成蹊大学法学部教授) |
図書館法と著作権法の目的が共通であることに鑑み、図書館等における複製行為のデジタル化に対する著作権法の解釈を検討する。第1 に図書館等が行う紙へのコピーがデジタル化しても法適用に変化はない。第2 に図書館等が資料をスキャンしてデジタルファイルとして提供することも、そのファイルを図書館等の利用者が持参したメモリカードやスマートフォン等の小型デジタル機器によって受け渡すことも31条によって可能である。第3 に利用者が筆写する従来の行為が30条によって可能であるのと同様、小型デジタル機器による複写も30条によって認められる。第4 に31条について図書館等における複製行為の主体は図書館等であると解されてきたが、31条は「複製物提供事業」の主体が図書館等である旨規定しているのであり、「複製行為」の主体は限定していないから、利用者自身が複製することも条文上直接認められていると解すべきであることを明らかにする。 |
図書館実務と著作権【p16-20】稲田 孝哉(公益社団法人日本複製権センター事務局長) |
図書館においては、その所蔵する資料を適切に管理し、利用者に有効活用してもらうために日々努力されていると思われるが、図書館側での所蔵資料の保存方法あるいは利用者に対する貸出方法等においても、適用される著作権法について理解しておくことが重要である。 特に図書館側での所蔵資料のコピーについては、権利制限対象のケースとそうではないケースがあるので十分注意が必要である。 ここでは主に31号図書館の事例を中心に解説したが、最近は文化庁が対象図書館の範囲を拡大し、また、必要な司書相当職についても講習会を開催して増員を目指す等、より一般の人々に図書館を有効活用していただく施策を進めていることは心強いことである。 図書館においても利用者に対する各種サービスを色々と企画・考案して提供しているところも多く、利用者にとっても便利なサービスはありがたいことであるが、あくまでも著作権法の定める範囲以内でのサービス提供が重要である。 |
障害者サービスと著作権について ―これまでの経緯と個々のサービスとの関係を中心に―【p21-26】 南 亮一(国立国会図書館関西館) |
障害者サービスに関係する著作権法の規定は、1971年の現行著作権法の制定時に始めて設けられ、約30年の歳月を経た2000年から10年の間の数次の改正を経て、図書館における障害者サービスの展開にも資する内容となった。 本稿では、このことを踏まえ、障害者サービスと著作権との関係と障害者サービスに関する著作権法の改正の経緯について触れた上で、個々のサービスと著作権との関係について解説した。 |
大学図書館における著作権法の運用 学習支援・広報活動・展示活動に注目して【p27-33】 山口 真也(沖縄国際大学) |
本稿では、筆者が在住する沖縄県での著作権をテーマとする研修の中で受けた質問の中から、学習支援、展示活動、広報活動に関わる5 つの事例を取り上げ、大学図書館での望ましい著作権法の運用方法について解説・考察した。具体的には、①図書館資料のカメラ撮影については、館内規則で禁止する大学も多いが、その必要性が利用者側からみてわかりづらいだけでなく、大学生の経済状況や情報環境の変化を考慮しておらず、見直しが必要であること、②大学図書館でも近年盛んになってきている展示活動においては従来の法解釈をふまえつつ、入手困難な資料の複製において古書市場の動向判断をするべきかどうか、という問題があること、③図書館の広報媒体における本の書影の掲載については、近年法改正がなされているものの、複製主体の解釈においてあいまいな部分が残されていること、を指摘するとともに、司書職の専門性として、直接サービスの場面において、利用者側に立った著作権法の解釈・運用が求められることを提案した。 |
図書館におけるオープンデータの現状と可能性【p35-40】 佐藤 亮太(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士) |
情報を物から独立させたデータとして扱うことが一般的となったデジタル時代において、図書館の役割は変容している。図書館は、その保有する大量のデータを、インターネットを通じて市民に公開し、再利用をさせること(オープンデータ)を求められるのである。オープンデータにおいては、ただデータを公開するだけでは不十分であり、市民に広く再利用を認めることが重要である。本稿では、オープンデータをリードする欧米と我が国のこれまでの施策や現状を紹介した上で、図書館が行い得るオープンデータと、その方法としてのライセンスデザインについて解説・検討する。 |
くずし字学習支援アプリKuLAについて【p41-44】飯倉 洋一(大阪大学大学院文学研究科教授) |
ハーバード大学図書館 第2回 ハーバード・イェンチン図書館(Harvard-Yenching Library)【p45-49】 大塚奈奈絵(東洋大学非常勤講師) |
国際交流の場としての専門図書室【p50-51】林 理恵(公益財団法人国際文化会館 図書室) |
リーガル・リサーチ 第5 版【p52-53】笠 学(大阪大学大学院法学研究科資料室) |
レコード・マネジメント・ハンドブック ―記録管理・アーカイブズ管理のための【p53-54】 山田 敏史(日本レコードマネジメント株式会社) |
平成28年度 専門図書館協議会北海道地区研修事業 報告 札幌ビジネス支援図書館セミナー【p55-57】 伊藤真理子(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部 地質研究所 地域地質部 地質情報グループ) |
平成28年度 専図協イブニングセミナー(関東地区)報告 公共図書館から見る「電子ジャーナルプラットフォームJ-STAGE」【p58-60】 久保田 萌(高知県立図書館) |
JSLA-SLAアジアン・チャプター若手育成賞2017【p61-62】事務局 |
事務局だより【p63-64】事務局 |
各種セミナー報告【p65-66】事務局 |