専門図書館284号(2017年7月)特集:食にまつわる情報(詳細)

特集「食にまつわる情報」にあたり【p1】
食の文化ライブラリーについて【p2-8】小林 顕彦(公益財団法人味の素食の文化センター 食の文化ライブラリー)
(公財)味の素食の文化センターの事業の一つ、食の文化ライブラリーが主題とする食文化の範囲は広大である。昨今の食への関心の高まりは好ましいことだが、加速度的に膨張、時には遍在する食情報に惑わされず、主題に沿った資料を厳選し発信することは、財団の使命と照らしても基軸である。一方においてICT技術の発展は、情報獲得手段として高度化してきた。この状況は、来館利用であれ、HP上の利用であれ、利用者の図書館に対する要求度も高めていくと考えられる。ここまで公開施設として独自展開をしてきたが、今後は、外部の力を借り、利用者がよりよく目的とする資料に到達する図書館への脱皮が必要とされる。本稿は、食の文化ライブラリーがより便利な「問題解決型図書館」を目指すと同時に、財団が描く「食文化の情報センター」化構想へのイントロとして、現在取り掛かり始めた事例の一部を紹介したものである。
魚食の危機【p9-14】濱田 武士(北海学園大学)
 魚食の危機は30年以上前から語られている。官民では、危機の回避を図る対策として、魚の付加価値向上対策やブランド化といった加工・販売技術の普及や、イベント的な魚食普及運動を推進してきたが、消費低迷の勢いが止まらない。その原因として考えられるのは、魚食の危機をもたらしてきた社会構造が明らかにされてこなかったからだと思われる。
 本稿では、魚食の危機がどのような経過を経て形成されたのかを綴った。特に食べる側の生活者と売る側の「関係」に着目した。かつて鮮魚売り場には、魚屋の職能が備わった対面関係があった。それは魚食普及の場でもあった。しかし、セルフ方式の売場が拡大したことで、無言の関係が拡大し、売り買いの関係のなかにあった魚食普及の機会が社会的に失われた。これこそが魚食の危機をもたらした。
「食」に関する情報資源を使った図書館の取り組み【p15-20】
矢崎 美香(九州女子大学人間科学部人間発達学科人間基礎学専攻)
 「食」をテーマに九州女子大学・九州女子短期大学附属図書館で図書館職員として携わってきた情報資源の活用方法や図書館司書課程教員としての授業内容を紹介する。
 本学は、学部構成上「食」に関する情報資源を多岐にわたり所蔵している。そのため、図書館では「食」をテーマとした情報資源の展示を行い、学生の利用を促している。また、栄養学科の「臨地(病院)実習」、人間生活学科の「食品学実験」科目の教員と連携して、授業の中で情報資源の活用方法を教授している。この授業連携では、学生の作成物は教員が評価し、その評価の結果を受けて、再度図書館は授業を行うなど、学生の学習支援の取り組みをしている。また、図書館司書課程教員として、「情報サービス演習Ⅰ」の授業では、実践演習として情報資源を使った展示を行っている。学生の展示は、「食」に関する情報資源を使うことが多く、他の学生の興味関心を引く機会となり情報資源の活用に結びついている。
栄養士の知識生産の新展開【p21-26】宮森 一彦(関東学院大学)
 日本における司書と栄養士の職業研究を通してその現状を確認し、カナダを中心とした栄養士の知識生産の新展開をふまえて、司書と栄養士における「食」をめぐる情報の意義について論及する。まず、日本における司書と管理栄養士・栄養士の比較研究を通してその環境と認識の変化を概観する。次いで英語圏を中心に広がる管理栄養士が自らの活動と社会科学・社会思想の接合を通して自己認識を深めるCritical Dieteticsと称される動向及び、専門職としての固有の知識体系を国境を越えて展開しようとする「PEN」の現状を紹介し、身体を〈つくる〉まなざしの専門性を持つ栄養士が持つ言葉への感性が紡ぐ言葉の可能性への期待を述べた。また、司書がリードして双方の職業連帯も図りながら、職業的環境の向上のための認識を深めていただくことへの期待に言及した。
「食」を支える農業研究に関する情報源とその利活用【p27-33】
林 賢紀(国立研究開発法人国際農林水産業研究センター)
 「食」を支える農業分野に関わる研究成果などを提供する情報源として農林水産省が提供するAgriKnowledgeや「まるみえアグリ」がある。本稿では、これらのデータベースについて紹介したほか、青果ネットカタログ「SEICA」と収録データのオープンデータ化など情報源の二次的な活用について紹介した。また、これまで蓄積された情報を単に利用するだけでなく、専門情報機関において再構成して活用する方向性を示した。
デジタルアーカイブのライブラリアンとキュレーター ~江戸料理レシピ・クックパッド公開の教訓~【p34-38】
北本 朝展
東京都立多摩図書館【p39-42】井上 さやか
スタッフの仕事、松竹大谷図書館の一日【p43-44】武藤 祥子
認知症予防におすすめ図書館利用術 フレッシュ脳の保ち方【p45-46】森 斉丈
図書館徹底活用術【p46-47】若宮 俊
平成28年度 研修会(北海道地区)参加報告
 「議会図書室の議会における役割と図書館サービスについて」【p48-50】吉原 淳
平成28年度 研修会(関東地区)参加報告
 資料保存セミナーを受講して【p51-54】日本化薬株式会社 知的財産部図書室
事務局だより【p55-56】事務局
各種セミナー報告【p57】事務局