専門図書館286号(2017年11月)特集:情報流通の今後を考える(詳細)

特集「情報流通の今後を考える」にあたり【p1】
オープンサイエンスの進展と日本の動向 【p2-8】
林 和弘(文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術予測センター)
トップダウンのG7科学技術大臣会合からボトムアップの研究データ連盟(RDA)まで、オープンサイエンスが政策と実践の両面で進み、日本でも様々な取組が始まっている。特に研究データの共有に関しては、FAIRデータ原則の認知が進み、データリポジトリの認証も始まった。学術情報流通や研究活動そのものが再構成される中、ステークホルダー、データリポジトリ、情報サービスなどが、信頼をどのように確保するかが鍵となる。
日本人の情報行動の変化【p9-15】
橋元 良明(東京大学大学院情報学環)
 筆者等が5 年毎に実施している全国調査「日本人の情報行動調査」によれば、インターネットの普及とともに、若年層を中心としてテレビ視聴時間が激減し、10代20代では時間量においてテレビ視聴時間をインターネット利用時間が上回った。テレビは主観的世界を均質化する方向に作用するメディアであるのに対し、インターネットは個別化する方向に作用し、世の中のできごとに関する認識や話題が拡散してきている。また、文化的にもその生成過程が透明化され、一般市民の参加が容易になった。そうした中で、「文字の消費」という側面では、けっして情報行動として衰退したわけではなく、SNSやメールのやりとりなど電子文字も含めると、むしろ空前絶後の文字消費時代に突入しており、いわば「文字の文化」の再来と行っても過言でない時代が到来したとも言える。
オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)の成立とその活動
 -機関リポジトリの役割の変化をうけて-【p16-22】
高橋 菜奈子(千葉大学附属図書館・JPCOAR運営委員会委員)
本稿では、日本における機関リポジトリの歩みを概観し、2016年に設立されたオープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)の概要を紹介した。近年の学術情報流通をめぐる環境の変化の中で機関リポジトリの役割が変化しつつあるが、JPCOARはそれらに対応し、研究データ、研究者識別子、オープンアクセス方針、メタデータスキーマの課題に取り組んでいる。JPCOARは、JAIRO Cloudというシステム基盤を持つとともに、図書館員を中心とした大きなコミュニティを形成し、人的な基盤を備えている。
国や地方公共団体におけるLODの公開とその活用事例【p23-29】
加藤 文彦(国立情報学研究所 オープンサイエンス基盤研究センター)
 国や地方公共団体によるオープンデータの公開や活用が進む中、データをより効果的に公開するための手段としてLODやその関連技術が注目されている。本稿では、国立国会図書館による典拠データや経済産業省による法人インフォ、総務省による統計LOD、各地方公共団体による共通語彙基盤に則ったデータ公開など、すでにLODに関する動きに取り組んでいる国の機関や地方公共団体の公開事例やその活用事例を紹介する。
大阪市立図書館デジタルアーカイブについて
 オープンデータ化への取り組み【p30-35】外丸 須美乃(大阪市立中央図書館)
大阪市立図書館では1996年度より大阪関係の近世資料や絵はがき・写真・引札等の近代資料をデジタル化して閲覧できるしくみを構築してきた。20年以上にわたる当館デジタルアーカイブに関する取り組みを解説し、2017年3 月から提供開始したオープンデータ化への検討経過、具体的な作業内容等を紹介する。また、大阪市のICT施策における位置付け、利活用の取り組み、今後検討を進めていく課題について述べる。
「近世期絵入百科事典データベース」について【p36-39】石上 阿希
立正大学 古書資料館【p40-44】田中 麻巳
東京海上日動「図書史料室」~ Library & Archives ~【p45-46】櫻井 由佳
サインはもっと自由につくる 人と棚とをつなげるツール【p47-48】横山 ひろみ
NDCの手引き:「日本十進分類法」新訂10版入門【p48-49】横谷 弘美
平成29年度 教育プログラム(関西地区)参加報告
 「専門図書館員のための基礎から学ぶ著作権講座
 ~著作権侵害を起こさないために~」に参加して【p50-51】前岩 幸
平成29年度 研修会(北海道地区)参加報告
 テーマ「本の修繕」【p52-54】松岡 理恵
JSLA-SLAアジアン・チャプター若手育成賞2017受賞 体験記【p55-56】スウェータ・ディンラ/林 理恵
事務局だより【p57-58】事務局
各種セミナー報告【p59】事務局