専門図書館291号(2018年9月)特集:平成30年度全国研究集会(詳細)

記念講演「最近恋をしていますか」【p13-18】 神代 浩 東京国立近代美術館長、図書館海援隊長
2010年有志のネットワークとして図書館海援隊を立ち上げ、様々な図書館関係者とつながってきた。その中で、実のあるつながりを持つためには情熱や志では不十分だと気付いた。恋をするのが最も効果的ではないだろうか?
第1分科会:利用者のアウトプットを促進する情報リテラシー
事実(ファクト)と論拠(エビデンス)を探求する情報リテラシー【p19-23】梅澤 貴典 中央大学職員
学術情報の電子化に加えてオープンアクセス化も進む現代の図書館には、利用者の情報識別眼を磨きアウトプットを促進する学術情報リテラシー教育が期待される。本分科会では、受講者側の視点から模擬講習を通じて各館における利用者ガイダンスの改善点を考える。
第2分科会:著作権法をめぐる最新の動向2018
平成30年著作権法改正について【p24-28】澤田 将史 文化庁長官官房著作権課 著作権調査官
平成30年第196回国会において、著作権法に関連する4つの法律が成立した。本稿においては、そのうち著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)による改正について解説を行い、その他の法律による改正については概要を紹介し、近時の著作権法をめぐる動きを概観したい。
第3分科会:専門図書館をうまく活用するには
専門情報機関の探し方【p29-34】 青柳 英治 明治大学文学部/専門図書館協議会 調査分析委員会委員長
本稿では、専門情報機関を把握できるツールを、掲載機関数と特性の観点から、探訪支援と情報サービス支援に区分して説明する。特に、情報サービス支援ツールの典型として『専門情報機関総覧』を取り上げ、歴史・構成・機能・特徴を紹介する。さらに、新サービスの「WEB閲覧サイト」の特徴を示しながら、検索質問をもとに使用方法を示す。
第3分科会:専門図書館をうまく活用するには
日々のビジネスにおけるレフェラルサービスの活用【p35-36】
中谷 俊介 株式会社電通 事業企画局 ナレッジ・マネジメント部 部長/専門図書館協議会 調査分析委員会委員
社員の働き方改革を支援する「情報センター」(リファレンスサービス)と「ソリナビ」(レフェラルサービス)。さらなるリソース・マネジメントの鉱脈として注目すべき、個々人が持つタレントやスキル。広告会社の現場を支える情報マネジメントについて概説します。
第4分科会:研究成果の発信力強化に向けて:今図書館ができること
JPCOARスキーマによる学術成果流通の向上
   ~オープンアクセス方針策定の広がりをうけて~【p37-42】
高橋 菜奈子 千葉大学附属図書館・JPCOAR運営委員会委員
本報告では、オープンアクセス方針策定の内外の動向と、オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)が日本の機関リポジトリ運営者のために実施した支援策を紹介した。今後、オープンアクセスの実効性を検証するためには、メタデータ整備が重要となる。JPCOARスキーマの改訂のうち、オープンアクセス方針に対応する項目を中心に紹介した。
第4分科会:研究成果の発信力強化に向けて:今図書館ができること
研究者総覧SAMURAIとデータ駆動型リポジトリ【p43-47】
谷藤 幹子 物質・材料研究機構、情報統合型材料開発部門(MaDIS)材料データプラットフォームセンター(DPFC)
NIMSの研究者総覧「SAMURAI」は、その第一世代から10年を経た2017年夏に、次世代研究者総覧としてリニューアルし、2018年夏にスマートフォン版を新たにリリースした。この10年の間に、クラウドサービスを利用した論文ファイル共有や、研究用ソーシャルネットワークを利用した論文のアラート配信など、研究における情報利活用が大きく様変わりした。NIMSはこれらの変化を研究者総覧での挑戦的な課題として取り組み、次世代の総覧サービスとして公開している。特に研究者識別子ORCIDを組織として導入し、NIMSに所属する研究者をORCIDで同定することよって、先の情報サービスとの相互運用性を高めたことは、国内初の総覧実用化となる。論文投稿の簡易化だけでなく、移動する研究者のプロフィール情報のポータビリティ、外部の文献サービスとの連結、文献以外の業績も対象とする検索、スマートフォン対応などの機能開発と、対象とする職制を広げたことにより、研究者ページビュー(閲覧数)は約1.4倍の年90万件に向上した。これらの挑戦は、人の情報に紐付くリポジトリサービスの次世代版を考える前哨ともなっている。本稿ではSAMURAIとリポジトリに焦点を合わせたデータ駆動型の将来を俯瞰する。
第4分科会:研究成果の発信力強化に向けて:今図書館ができること
海洋研究開発機構における研究開発成果の発信【p48-52】 光森 奈美子 海洋研究開発機構
海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究開発成果の発信は、様々な方法で行われている。ここでは、JAMSTEC刊行物や職員による学術雑誌論文等を収録する「JAMSTEC機関リポジトリ」、地球シミュレータを利用して得られた成果を収録する「地球シミュレータ研究成果リポジトリ」、JAMSTECの船舶や潜水船等を利用して得られたデータ・サンプルの情報等を収録する「JAMSTEC航海・潜航データ・サンプル探索システム」の3 つを紹介する。
第5分科会:専門図書館とデジタルアーカイブ
デジタルアーカイブの全般動向【p53-57】
時実 象一 東京大学大学院情報学環 高等客員研究員
デジタルアーカイブが利用されるためには、(1)大量であること、(2)インタフェースが使いやすいこと、(3)利用条件が明らかであること、が重要である。(1)については欧米のネットワーク、EuropeanaとDPLAを紹介し、(2)についてはAPIとIIIFについて説明、(3)についてはクリエイティブ・コモンズとライツ・ステートメンツについて解説した。
第5分科会:専門図書館とデジタルアーカイブ
図書館資料のデジタル化と公開における権利処理【p58-62】 数藤 雅彦 五常法律会計事務所 弁護士
専門図書館が自館の資料をデジタルアーカイブ化し、インターネットを通じて公開する際に問題となる著作権等の権利処理を整理した上で、専門図書館の職員が資料のデジタルアーカイブ化を行うにあたって注意すべきポイントを解説する。
第5分科会:専門図書館とデジタルアーカイブ
渋沢栄一記念財団におけるデジタルアーカイブの構築【p63-67】
井上 さやか 若狭 正俊(公財)渋沢栄一記念財団 情報資源センター
物理的な閲覧室を持たない情報資源センターでは、「渋沢栄一」「実業史」に関するデジタルアーカイブを、インターネットを通じて公開している。当センターにおける同アーカイブ構築の過程や、その課題と意義を紹介する。
第6分科会:専門図書館をジェンダーの視点で考える
専門図書館をジェンダーの視点で考える
   ~連携の構築をキーワードとして~【p68-73】青木 玲子 国立女性教育会館客員研究員
今やジェンダー平等は、世界的な共通課題である。1970年代からの専門図書館におけるジェンダー課題の取組を紹介する。専門図書館とジェンダーを主題とする機関との連携の可能性を事例発表から提案する。