専門図書館305号(2021年6月)特集:305号 活字を知る(詳細)

 

特集「活字を知る」にあたり【p1】
ヨーロッパにおける活字の始原と発展【p2-7】
雪嶋 宏一(早稲田大学教育・総合科学学術院)
本稿では、15世紀にグーテンベルクによって発明された活版印刷術の中で活字制作に焦点を当ててゴシック体活字、ローマン体活字、イタリック体活字の始原と発展について概観した。グーテンベルクによるゴシック体活字の制作から16世紀のフラトゥール体活字、シヴィリテ体活字への発展、イタリアの人文主義者書体に基づいて誕生したローマン体活字の成立からヴェネツィアでの発展と1530年代にパリに導入されてからの発展、そして、15世紀末にヴェネツィアで誕生したイタリック体活字が16世紀中葉にフランスで改良されて発展したことを述べた。
活字の誕生と日本への伝来【p8-14】
石橋 圭一(印刷博物館・学芸員)
活字は文字印刷を効率化する印刷技術として誕生した。東アジア、西洋で独自に誕生した活版印刷は16世紀の日本に伝わると、天皇、武家、町人などの関心を集め、多様な出版活動を生んだ。江戸時代、文字印刷は木版が主流になった後、幕末にかけて再び、活字に脚光があたる。従来困難であった、和文の活字鋳造方法に改良が加えられることで、普及が進む。活字は姿を消したものの、文字によるコミュニケーションを表象する言葉として、今もその名を留めている。
活版による本づくりの精緻さを感じて欲しい
「市谷の杜 本と活字館」のご紹介【p15-19】
斎田 玲(大日本印刷株式会社 コーポレートアーカイブ室)
本稿は、DNP大日本印刷の市谷地区再開発の一環として開設された「市谷の杜 本と活字館」を紹介するものである。大正時代の建築物を創建当時の姿に復元し、会社の原点ともいえる「活版印刷による本づくり」のプロセスを動態展示した施設が完成するまでを記した。
一般財団法人 印刷図書館について【p20-24】
紫垣 優(一般財団法人印刷図書館)
一般財団法人印刷図書館は、1947年(昭和22年)に設立された印刷に関する専門図書館である。会員制の図書館ではあるが、有料で一般公開しており、複写サービスも行っている。本稿では印刷図書館の沿革、サービス、蔵書等について詳しく紹介する。
デジタル印刷が起こす出版の革新と拡張
ライト出版誕生から本のまちづくりまで【p25-31】
藤井 建人(公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部)
全国に21,000事業所ある印刷会社は、各地で紙とデジタルを通した印刷・出版・情報加工事業を地域密着で展開する。いよいよ実用化の始まったデジタル印刷方式では必要な時に必要なコンテンツを必要な部数だけ出版することが可能になった。デジタル印刷技術は絶版本の再商品化、地域出版の容易化、ライト出版の誕生など、出版ビジネスに革新を起こし、出版領域を拡張する方向に作用している。出版と印刷はこれからの本づくり、人づくり、まちづくりにおいて、かつてない新たな付加価値を生む役割を担っていくだろう。
21世紀活字文化プロジェクトについて
-本の魅力を伝えてきた20年- 【p32-36】
和田 浩二(読売新聞東京本社元専門委員)
読売新聞社内に事務局を置く活字文化推進会議は、2002年の設立以来、出版業界と連携し、様々な読書推進の事業を展開してきた。本稿では設立の経緯にふれるとともに、大学での読書教養講座、若年層に広がりつつある書評ゲーム「ビブリオバトル」関連事業について概説する。
新型コロナウィルス感染症対策アーカイブ【p37-40】
石間 衛、土澤 美雪 (TRC-ADEAC株式会社)
奈良文化財研究所の図書資料室とデータベース【p41-44】
高田 祐一(奈良文化財研究所)
電子化、自動化、コロナ禍と私の仕事【p45-46】
山村 智子(横河電機株式会社)
書物史研究の日仏交流:日仏図書館情報学会創立50周年記念出版【p47】
新島 進(慶應義塾大学)
スキルアップ! 情報検索:基本と実践 新訂第2版 【p48】
名城 邦孝(広島女学院大学)
事務局だより【p50-51】
事務局
各種セミナー報告【p52】
事務局