専門図書館308号(2022年3月)特集:改正著作権法:電子送信と図書館(詳細)

特集「改正著作権法:電子送信と図書館」にあたり【p1】
図書館における著作物の送信に関する著作権法の改正の意義
これまでの経緯を踏まえて【p2-7】
南 亮一(一橋大学大学院法学研究科博士後期課程)
2021年6月2日に公布された著作権法の一部を改正する法律により、①国立国会図書館が特定絶版等資料を登録利用者に送信すること等を認める規定と、②特定図書館が、指定管理団体に補償金を支払った上で、原則としてその所蔵資料の一部分を、当該図書館の登録利用者に送信すること等を認める規定等が設けられた。ただ、これらの内容は、既にかなり前から図書館側から要望され、検討が進められていたものである。本稿ではこれらの検討の経緯等を紹介する。
図書館DXとしての電子送信【p8-14】
湯浅 俊彦(追手門学院大学 国際教養学部)
「著作権法の一部を改正する法律」が,2020年5月26日に成立し,同年6月2日に公布された。本稿では、図書館関係の権利制限規定の見直しのうち,①国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信、②各図書館等による図書館資料の公衆送信について、2010年前後からの歴史的経緯を明らかにし、図書館DXの観点から図書館による利用者向け送信サービスの意義を考察する。
図書館情報資源の電子化の拡大と図書館経営への影響【p15-20】
家禰 淳一(愛知大学)
公共図書館が取り扱うデジタル情報資源は多様化している。日本の公共図書館の電子書籍提供サービスやデジタルアーカイブを中心に取り上げる。さらに、国立国会図書館のデジタル化資料との関連性、関連法による事業への影響と伸展について、主に2010年代以降を振り返りながら、図書館経営の変化と今後の電子図書館化に向けた課題と展望を概観する。
グローバルな視座から 図書館と著作権法上の均衡異常【p21-28】
山本 順一(放送大学 客員教授)
最近の世界の著作権立法の動向をウォッチした国際図書館連盟(IFLA)が運営しているブログを手掛かりとして、デジタル・ネットワーク社会の進展に平仄を合わせようとする内外の著作権制度の変動について検討した。著作権法の世界にも、保守的な国と先導的な国、既存産業経済偏重の国と新規科学技術主導の国、世界の国々はそれぞれに近未来の著作権制度を造型し、効果的な手続と関係組織を社会実装している国とそうではない国がある。その差は、ひとつには図書館に関する著作権制限規定のあり方から発生するもののように思える。具体的には、CDL(ControlledDigital Lending)、TDM(Text-and-Data Mining)、TPMs(Technological ProtectionMeasures)と契約自由の(原則の)優越(Primacy of Freedom of Contract)、CMOs(CollectiveManagement Organizations)、およびコロナ・パンデミックへの著作権制度対応についての国際的な温度差を考えた。
海外機関における図書館送信サービスの利用とControlled Digital Lending:
カリフォルニア大学バークレー校の事例【p29-35】
マルラ俊江(カリフォルニア大学バークレー校)
カリフォルニア大学バークレー校(UCB)は、2021年7月に国立国会図書館の図書館送信サービスの提供を開始した。本稿では、当館の事例を中心に海外の図書館等におけるこのサービスの利用状況及び運用の問題点について示すとともに、カリフォルニア大学システムで活用されたHathiTrustETAS、UCBで運用されたコースEリザーブの仕組みと利用について報告する。
専門図書館と著作権
著作権法第31条「図書館等」に関する著作権委員会の活動を中心に 【p36-43】
永井 昌史(日本化薬株式会社知的財産部情報グループ)
専門図書館は様々な種類の組織によって設立されているため、著作権法が適用されるかどうかも館種毎に異なる。著作権委員会は、著作権に関する各館の疑問や要望を拾い上げ、課題解決に向けた活動を行っている。本稿では、著作権委員会の活動全体を紹介し、専門図書館における著作物の複製について概要を示すと共に、会員図書館や関連団体から質問や要望が寄せられている案件について、著作権法における専門図書館の関わりを確認しながら、著作権委員会の取り組みを報告する。
Jcrossコレクション「図書館の紹介動画」【p44-47】
森本 未祐(株式会社ブレインテック 技術サポートグループ)
学習院大学法学部・経済学部図書センター【p48-52】
佐藤 飛鳥(学習院大学法学部・経済学部図書センター)
コロナ禍の仕事の記録【p53-54】
森 未知(独立行政法人国立女性教育会館)
障害者サービスと著作権法 第2版(JLA図書館実践シリーズ26)【p55-56】
野口 武悟(専修大学)
デジタルアーカイブの理論と政策:デジタル文化資源の活用に向けて 【p57】
福島 幸宏(慶應義塾大学文学部)
事務局だより【p58-59】
事務局
各種セミナー報告【p60】
事務局