専門図書館309号(2022年6月)特集:大正浪漫(詳細)

特集「大正浪漫」にあたり【p1】
「大正ロマン」の創造
ノスタルジア、ジェンダー、ヴァナキュラー・ロマンティシズム【p2-7】
佐藤 守弘(同志社大学文学部教授)
「大正ロマン/浪漫」という言葉が創られ、ブームとなったのは1970年代日本のポピュラー文化においてであった。本稿は、当時のどのような欲望がそれを創り上げたのかを問うものである。そのためにまずはその語の成立の過程を素描した上で、「大正ロマン」をノスタルジアという心性を鍵に分析する。次に「小梅」のCMのショット分析を基に、そこで描かれる視線の構造を解読し、当時におけるジェンダー構造の変化の萌芽を指摘する。さらにここでの「ロマン」が美術史などでいうロマンティシズムには収まりきらない広がりを持っていた可能性を示唆した上で、当時の受容者が「大正ロマン」に抱いた欲望に迫っていきたい。
都市行政からみた大正期の資料【p8-13】
田村 靖広(公益財団法人 後藤・安田記念東京都市研究所 市政専門図書館)
財団法人東京市政調査会は1922(大正11)年2月に設立され、2012年に名称を現在の公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所(以下「本財団」)に変更して、2022年2月に財団創立100周年を迎えました。本稿では、本財団の調査研究活動を中心に、市政学の確立、東京市政の改革、東京都制案、東京市会浄化運動、関東大震災など大正期の主に東京市における行政課題と関連資料を紹介します。
出版美術に表現された大正ロマンを求めて
弥生美術館・竹久夢二美術館【p14-19】
石川 桂子(竹久夢二美術館 学芸員)
弁護士・鹿野琢見が創設した弥生美術館・竹久夢二美術館は、出版美術を軸に“大正ロマン”をテーマの一つにして、収集と調査研究及び展示を数多く実施。本稿では設立経緯、館収蔵品の概要、大正ロマンをテーマにした企画展を中心に、その活動について紹介する。
大正時代の食を探索する
味の素食の文化ライブラリー所蔵資料から【p20-26】
草野 美保((公財)味の素食の文化センター)
「大正時代の食」を調べたい来館者へはどのような図書をご案内したらよいだろうか。具体的な資料を独自分類で排架している書架から紹介する。さらに、「秋山徳蔵メニューカード・コレクション」からは、当時の素材や技術の粋を尽くした宮中料理を、そして一般の人々の食については婦人雑誌『料理の友』のちょうど100年前(大正11年)の12冊を取り上げ、人々が家庭でどんなものを食べ、食の何に関心を持っていたかを読み解いていく。
資生堂企業資料館の収蔵品を通してみる大正期の化粧文化について【p27-32】
小泉 智佐子(株式会社資生堂 アート&ヘリテージマネジメント部)
資生堂企業資料館(Shiseido Corporate Museum)は、株式会社資生堂が120周年の記念事業の一環として静岡県掛川市にオープンした企業博物館である。本稿では、企業資料館の収蔵品の中から多色白粉とそれに関連する資料を取り上げ、大正期の女性の意識の変化と化粧文化の関係性について考察する。
日本近代文学館所蔵資料から考える「大正浪漫」 【p33-38】
宮西 郁実・土井 雅也(公益財団法人日本近代文学館)
公益財団法人日本近代文学館の沿革や主な事業をご紹介する。また「大正浪漫」に関連して、所蔵資料や“複刻版”の刊行事業のなかから、明治期の浪漫主義の代表的作品である島崎藤村『若菜集』・与謝野晶子『みだれ髪』、大正期に刊行された木下杢太郎『食後の唄』、大正 7年創刊の児童文学雑誌「赤い鳥」、耽美派の作家・谷崎潤一郎の長編小説『痴人の愛』等をご紹介する。
働く女性のあゆみと行政資料コレクション
厚生労働省委託事業 女性就業支援・働く女性の健康に係る情報提供事業【p39-42】
一般財団法人女性労働協会
金沢市立金沢海みらい図書館【p43-45】
吉村 和也(金沢市立金沢海みらい図書館)
専門図書館の周辺で【p46-47】
関 乃里子 (株式会社ブレインテック)
図書館評価の有効性 評価影響の理論を用いた実証研究【p48】
溝上 智恵子(みぞうえ ちえこ)(筑波大学)
地域資料サービスの展開【p49-50】
相宗 大督(あいそう だいすけ)(大阪市立城東図書館)
事務局だより【p51-52】
事務局
各種セミナー報告【p53】
事務局