専門図書館313号(2023年6月)特集:社会問題と図書館(詳細)

特集 社会問題と図書館【p1】
総論・社会問題と図書館
「図書館の自由」と基本的人権との接点【p2-8】
山口 真也(沖縄国際大学)
本稿では、特集テーマにある「社会問題」を「人権問題」ととらえなおし、すべての図書館に「基本的に妥当する」とされる「図書館の自由」との関わりについて論じることで、専門図書館における社会問題への様々なアプローチについて、次の留意点を示した。1 )図書館の自由をポリティカルな面からとらえるとき、資料収集における「中立」とは「権力からの自由」という本質を持つこと、従って、対立する意見のある社会問題を扱う資料については、分量的な「偏り」は必ずしも否定されるものではないこと2 )知る自由の保障には「いっさいの基本的人権の保障を実現するための基礎的な要件」という第二の目的があること、従って、専門図書館における社会問題へのアプローチもまた人権保障のプロセスであること3 )国家による言論市場への介入を抑制できない日本においては、社会問題をテーマとする資料の取り扱いにおいて、「すべての検閲に反対する」という原則に立ち返ることが求められること
法務図書館の利用について
-歴史と伝統の法律専門図書館-【p9-13】
松藤 由美子(前国立国会図書館支部法務図書館図書管理係長)
法務図書館所蔵資料の利用方法について、令和 5 年 2 月にリニューアルした「法務図書館図書情報検索システム」の画面を示しながら紹介しました。法務図書館の利用を希望する方の検討の一助となれば幸いです。また、法務図書館所蔵の貴重書等を展示している法務史料展示室の紹介もさせていただいておりますので、ご興味のある方は是非足を運んでみてください。
社会保障と人口問題の専門図書館
 -国立社会保障・人口問題研究所図書室について-【p14-19】
小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所情報調査分析部長)
国立社会保障・人口問題研究所は、人口問題と社会保障の研究を目的とした厚生労働省の研究所である。その一環として、図書室を情報調査分析部に設置し、専門図書館として運営している。本稿では、研究部の中に置かれている図書室の概要、その特徴として、運営、蔵書、研究所の成果発信などの面から取り上げる。さらに、課題として、予算の効果的な執行、蔵書、運営継承の面から取り上げる。
現在の労働問題に対する図書館の役割と対応
 -労働図書館の取り組みの考察-【p20-25】
遠藤 和弘(独立行政法人労働政策研究・研修機構 前・労働図書館司書)
当館は労働関係所蔵資料を柱に「書籍の貸し出し」「レファレンス」「特殊コレクション」「企画展示」「ILLサービス」などのチャネルを通じて、働く人々が求める情報を収集し、公開している。とくに①毎月の労働新刊書は継続的に収集②年に数回、所蔵資料を活用した企画展示を実施③戦前・戦後の主要労組などの特殊コレクションも所蔵――といった点が特徴。今後は情報化の一段の進展により、ツイッターなどのソーシャルメディアを活用した情報発信も求められよう。さらに人権、ジェンダー、LGBTQなどといった新たな社会問題への対処も不可避だ。
カンピソㇱ ヌカㇻ トゥンプ 国立アイヌ民族博物館ライブラリ
:アイヌ民族の歴史や文化の理解を深める「開かれた専門図書室」として【p26-32】
笹木 一義/工藤 綾華(国立アイヌ民族博物館 研究学芸部)
カンピソㇱ ヌカㇻ トゥンプ 国立アイヌ民族博物館ライブラリは、国立博物館に併設された図書室であり、アイヌ民族の文化や歴史を取り上げた書籍を中心とした「開かれた専門図書室」として2020(令和 2 )年 7 月12日に、北海道・白老町に開室した。国内でのアイヌ民族の歴史や現状についての認知状況が高くない中で、ライブラリの概要と利用状況を記すとともに、レファレンスや展示との連携等の活動、その役割と展望について述べる。
ジェンダー平等な社会をつくる:国立女性教育会館女性教育情報センターの取り組み【p33-37】
森 未知(国立女性教育会館情報課専門職員)/関森 あすか(国立女性教育会館情報課情報係)
国立女性教育会館(NWEC)は、男女共同参画を推進する独立行政法人である。NWEC内にある男女共同参画及び女性・家庭・家族に関する専門図書館「女性教育情報センター」は、図書約15万冊、逐次刊行物約4,200タイトル、新聞記事クリッピング約57万件を所蔵・提供している。また、女性の地位向上と男女共同参画社会形成を目指した情報の総合窓口「女性情報ポータル“Winet”」は、情報センター所蔵資料が検索できる「文献情報データベース」ほか、様々なデータベース・サイトを作成・提供している。本稿では、ジェンダー平等な社会をつくるために、情報センターが実施しているテーマ展示やパッケージ貸出等の取り組みと、Winetの活用法について紹介する。
人間文化研究機構研究資源ポータル「nihuBridge」【p38-42】
北岡 タマ子(人間文化研究機構)
紙の博物館図書室【p43-46】
五十部 めぐみ(公益財団法人紙の博物館)
林業文献センター移転顛末記【p47-48】
竹田 雅子(公益社団法人大日本山林会林業文献センター)
地域資料サービスの実践 補訂版【p49-50】
相宗 大督(大阪市立図書館)
ソーシャルメディア解体全書 フェイクニュース・ネット炎上・情報の偏り【p50-51】
廣瀨 涼(株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部)