専門図書館324号(2026年1月)特集:デジタルアーカイブの活用(詳細)

特集:デジタルアーカイブの活用【p1】
テキストが拓くデジタルアーカイブの可能性
 ―生成・構造化・活用の実践―【p2-8】
中村 覚(東京大学史料編纂所)
デジタルアーカイブにおけるテキストデータの役割が、OCR技術の進展と生成AIの普及により大きく変容している。本稿では、テキストデータの「生成」「構造化」「活用」という3 つの観点から、現在の技術動向と実践事例を概観する。クラウドソーシングとOCRを組み合わせた「みんなで翻刻」、TEIを用いた構造化テキストの作成と可視化を実現する「前近代日本-アジア関係資料デジタルアーカイブ」、生成AIとの連携を探る「Humanitext」などの先進事例を紹介しつつ、音声・映像からのテキスト生成、3 Dモデルとの統合といった新たな可能性についても論じる。さらに、品質管理、著作権処理、持続可能性といった実装上の課題を整理し、専門図書館が今後の方針を検討する上での段階的アプローチ、協働体制の構築、人材育成の方向性を提示する。テキストに関する技術を適切に活用することで、専門図書館が所蔵する資料の価値を最大限に引き出し、研究・教育・社会に対して新たな貢献をすることができる。
ジャパンサーチにおけるデジタルアーカイブの活用促進に向けた取組【p9-15】
笹山 光樹、服部 有希、赤穗 知郁、池田 功一(国立国会図書館電子情報部電子情報企画課)
ジャパンサーチは、我が国の様々な分野・地域のデジタルアーカイブを横断的に検索・閲覧・活用できるプラットフォームであり、国立国会図書館は、そのシステム運用・開発と連携実務を担当している。本稿では、連携実務担当の立場から、ジャパンサーチにおけるオープンライセンス化に向けた取組や、デジタルアーカイブの活用促進に向けた取組を紹介する。
データ駆動のためのデジタルアーカイブ
 ―立命館大学アート・リサーチセンターのDA事業―【p16-22】
赤間 亮(立命館大学アート・リサーチセンター)
立命館大学アート・リサーチセンターの研究活動は、デジタルアーカイブを基盤としている。特徴は、デジタル化技術、システム開発ともに内製型で行っている点。人文学の研究者向けの研究環境「ARCリサーチ・スペース」を提供し、研究者は自身のデータベースを構築。デジタルデータが様々なデジタルツールによって活かされていく、データ駆動型の研究が可能となっている。本稿では、それらの紹介と今後の展望について述べる。
デジタルアーカイブから新しい価値を生み出す
 活用促進のための工夫と実践【p23-28】
入江 真希 (TRC-ADEAC株式会社)
デジタルアーカイブが日常に溶け込んだ豊かな創造的社会の実現を目指し、国内の各専門分野で数多くの機関がデジタルアーカイブの構築を行っている現在、デジタルアーカイブを公開するだけでなく、継続的に運用して社会の課題解決に活用していくことが求められています。そのためにデジタルアーカイブを構築する段階でどのような工夫ができるか、公開後に活用促進のためにどのような取り組みが行われているかを、実際の公開事例を交えながら紹介します。
資料原本×デジタル公開の連動による発信強化:立正大学図書館の実践【p29-34】
渡邉 雪伸、榎本 絵莉香 (立正大学図書館 品川学術情報課)
立正大学品川図書館では、資料原本の価値をより多くの利用者に伝えるため、デジタル公開を活用した情報発信強化に取り組んだ。バーチャルツアー、AR/VRギャラリー、デジタル展示、資料講演・解説動画の制作・公開により、物理資料の閲覧体験を補完・拡張した。動画はオンラインで集約・分析され、利用者へのアクセス最適化が図られている。結果として、時間・場所に制約されず資料利用が可能となり、教育支援・研究支援・生涯学修支援としての活用が広がった。本事例は、資料原本とデジタル公開の連動による大学図書館の情報発信強化の有効性を示す。
松竹大谷図書館のデジタルアーカイブ
 ―公開の経緯と活用事例―【p35-42】
武藤 祥子(松竹大谷図書館)
松竹大谷図書館は、演劇・映画の専門図書館として50万点を超える貴重な資料を所蔵している。その保存と利活用を目的に、外部資金を活用して資料のデジタル化を推進し、立命館大学アート・リサーチセンターとの連携により、それぞれテーマの異なる7 つのデジタルアーカイブを公開した。多様な資料が検索システムで閲覧可能となり、学術的・実用的面での利活用の幅が広がり、その資料的価値を高めている。一方で、著作権処理、データの充実、メタデータ入力人員の不足、資金確保などの課題も残されている。本稿では、7 つのデジタルアーカイブについて、それぞれのデジタル化の経緯、概要と特徴、公開後の活用事例、今後の課題について報告する。
転換契約、その成果と限界【p46-49】
茂出 木理子(東京科学大学 戦略本部)
日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館【p47-50】
原 祥太(交通経済研究所資料室)
日本科学協会が行う日中友好事業【p51-52】
阿羅 美奈子(公益財団法人 日本科学協会)
図書館員のための英会話ハンドブック 国内編 改訂版【p53-54】
渡辺 幸倫(相模女子大学 学芸学部)
誰ひとり取り残さない図書館サービス
  多様なニーズに寄りそう8つの事例【p54-55】
高野 一枝(ライブラリーコーディネーター)