2022全国研究集会特別号(詳細)

ごあいさつ【 p.1 】
専門図書館協議会理事長 石田 徹
事業総括【 p.2-3 】
研修委員長 村井 友子
全国研究集会 ~多様化する専門図書館の”利用”と向き合う~【 p.4 】開催案内
全国研究集会の概要【 p.5-7 】
2022年全国研究集会拡大会議メンバーの声…【 p.8-9 】
第1分科会
「ファミリーヒストリー」を支える図書館でのリサーチ取材【 p.10-13 】
佐々木 麗(NHK 第2 制作センター〈社会〉 チーフ・プロデューサー)
「ファミリーヒストリー」という番組の制作や著名人の家族のルーツをたどる取材をする上で、図書館リサーチは非常に重要な位置を占めている。先祖の足跡を知るための客観的な資料や証言者探しをするために、どのように図書館を利用してきたか、そこではどんな課題があったのか、実際の制作プロセスから紹介する。
第2分科会
札幌市図書・情報館における人に寄り添う選書と配架【 p.14-20 】
淺野 隆夫(札幌市中央図書館)
札幌市図書・情報館は、従来型の図書施設が札幌市全域に配置された後の展開の中で、課題解決型の機能分館として2018年にオープンした。たった4 万冊程度の所蔵でありながら、予想を超える年間100万人の来館者、またLibrary of the Year 2019大賞受賞など多くの注目を集めることになった。その後のコロナ禍で何度も閉館、開館を繰り返すこととなったが、その中で見えてきたのは、図書のネット予約や電子図書館のような「クラウド化した図書館」と対となる「ダウンロードできない価値を生む図書館」。つまり、施設を持っている意味、司書や利用者といったひとがいる意味を追求する方向であった。本稿では日本十進分類法に依拠しないテーマ別配架のことを含み、司書の工夫が利用者を図書館に呼び戻している、そのさまを述べる。
第3分科会
 
1. “活用”を通して組織アーカイブズの価値を探る
総論1:渋沢栄一記念財団情報資源センターのアーカイブズ関連事業【 p.21-22 】
茂原 暢 (公益財団法人渋沢栄一記念財団 情報資源センター長)
公益財団法人渋沢栄一記念財団の「図書館・デジタル部門」となる情報資源センターでは、長年に亘りアーカイブズ関連事業に取り組んできた。分科会への導入として、企業の組織アーカイブズに関する啓発活動を主としたセンターのアーカイブズ関連事業について報告する。
2. “活用”を通して組織アーカイブズの価値を探る
総論2:組織アーカイブズとその”活用”:企業を中心に【 p.23-28 】
松崎 裕子 (公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター企業史料プロジェクト担当)
「古いもののコレクション」と誤解されがちであった「アーカイブズ」(日本では「組織アーカイブズ」とも言われる)とは、「個人または組織がその活動の中で作成または収受し蓄積した記録のうち、組織運営上、研究上、その他さまざまな利用価値のゆえに永続的に保存されるもの」を指すとともに、それらを収蔵・管理する館などの施設や部署、仕組み、プログラムといった意味を持つ多義的な言葉である。記録の作成に始まる一連の流れの最後の段階に位置する“活用”のためには、“活用”に至るまでの前段の準備・管理が肝要である。本稿ではこれを「前段なくして“活用”なし」と呼んでいる。グローバル化とデジタル化が進んだ1990年代後半以降、組織アーカイブズは、周年記念に関わる年史編纂やイベントでの利用に加え、情報開示、ブランディング、失敗史の継承をはじめとする多様な“活用”を通じ、親組織と社会に貢献している。
3. 資生堂における企業アーカイブズの成り立ちと活用について【 p.29-31 】
小泉 智佐子 (株式会社資生堂 アート&ヘリテージマネジメント部)
資生堂における企業アーカイブズの成り立ちと実際の活用について、資生堂企業資料館の創設の背景のほか、資料収集、デジタル化、活用事例などを紹介する。
4. アーカイブズを共有の知に -自由学園アーカイブズの構築と公開-【 p.32-37 】
村上 民 (自由学園資料室 主任研究員)
2021年、自由学園は創立100周年事業としてデジタルアーカイブ「自由学園100年+」と書籍『自由学園一〇〇年史』を製作した。これらの取り組みは組織アーカイブズを二つの方法でアウトプットしたものといえる。自由学園アーカイブズの構築プロセス、特にデジタルアーカイブ公開にむけての基本方針と方法、公開後の活用状況について紹介する。組織アーカイブズをその構成員のために、そして広く社会のために公開・活用することを「アーカイブズを共有する」としてとらえ、その意義と可能性を考える。
5. 東京国立博物館百五十年史編纂に関わる資料の整理と活用【 p.38-42 】
惠美 千鶴子(東京国立博物館百五十年史編纂室長)
令和4 年(2022)に創立150年を迎えた東京国立博物館は、『東京国立博物館百五十年史』を完成すべく編纂事業を進めてきた。その編纂に使用する関係資料は、『百年史』編纂時に使用したもの、博物館所属の研究員による研究会活動を通じて新たに館内より収集されたものなど多種多様である。『百五十年史』編纂に向けて、膨大な量の資料の整理・目録化が進められてきており、編纂の参考資料として使用されるほか、編纂以外にも活用され始めている。
第4分科会
専門図書館と著作権2022 ~令和3年著作権法改正の概要~【 p.43-48 】
澤田 将史 (三村小松山縣法律事務所・弁護士)
第5分科会
1. 会員制ビジネス図書館「BIZCOLI」の実践と地平
~「つなぐ」からみえる図書館の可能性【 p.49-53 】
岡本 洋幸 (公益財団法人九州経済調査協会 BIZCOLI館長)
BIZCOLIは、地域シンクタンクの公益財団法人九州経済調査協会が運営する会員制ビジネス図書館で、BIZCOLIの前身は1957年にスタートとした専門図書館協議会九州地区資料センターである。開館以来、「人がつながる、アイデアが生まれる」をキャッチコピーに取組みを続けている。2019年度には利用者数は2 万人を超え、経済図書館の閉館年度と比較すると約15倍となった。開館10年を節目に、BIZCOLIの取組みについて「つなぐ」をキーワードに再整理した。
2. らしくない図書館をまじめにめざします【 p.54-58 】
小佐野 みはる(山梨県富士吉田市役所)
「らしくない図書館」を合言葉に、図書館の知名度を上げるための取り組み、また、図書館が誰にとっても楽しい場所・どんな人でも足を運びやすい場所にするための「富士吉田市立図書館らしい」取り組みを紹介する。
第6分科会
世界のオープンサイエンスの動向と専門図書館への期待
-希少コンテンツを通じた集いの場へ【 p.59-65 】
船守 美穂(国立情報学研究所)
デジタル化とインターネットの進展により、人々は多くのデジタルコンテンツに自由にアクセスし、利用ができるようになっている。デジタルコンテンツを中心に、インターネット空間上にコミュニティが形成される動きもある。オープンサイエンスは、こうしたデジタル技術とインターネットの恩恵を科学活動に当てはめようという試みである。既得権益を有する商業出版社や、常に競争を強いられている研究者の価値観に阻まれながらも、ダイヤモンドOAや協調パラダイムなどのデジタル時代に適した価値観を新たに形成しながら、学術を広く社会に開放しようとしている。専門図書館の所蔵する資料は希少なものが多く、学術的にも利用価値が高い。しかし、資料や専門図書館の存在自体が十分に知られていないという課題を有している。専門図書館の資料やカタログ情報をデジタル化し、インターネット上で流通させることで、利用者を拡大することができる。デジタル時代の専門図書館は、データリポジトリを中心として、専門領域のコミュニティの集いの場となることが期待される。
全国研究集会参加者からのアンケート(抜粋)【 p.66-67 】
編集後記【 p.68】