特集:読書バリアフリーにあたり【p1】 |
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専門図書館と読書バリアフリー -協議会の議論と各省・出版界の対応【p2-8】
植村 八潮(専修大学文学部) |
「読書バリアフリー法」の施行により、利用者へのサービス提供に際し、公共図書館や大学図書館だけでなく専門図書館も情報保障が求められることになった。そこでの専門図書館の課題とはなにか。一つは専門図書館が多く収集する専門書の電子書籍化が一般書よりも遅れていることであり、また、図表、数式、レイアウトの関係で音声合成システムによる読み上げ(TTS)に対応できていないフィックス型電子書籍が多いことがある。本稿では、読書バリアフリー社会への対応に向けて、電子書籍サービスの動向や近い将来の展望について取り上げ、「基本計画」の内容と行政機関や出版・図書館の取組について解説する。 |
専門図書館と読書バリアフリー【p9-17】
佐藤 聖一(埼玉県立久喜図書館 公益社団法人日本図書館協会障害者サービス委員会) |
読書バリアフリー法により読書バリアフリーという言葉が広く知られるようになってきた。読書バリアフリーは単純に読書の困難のある人に対し、さまざまな形式の資料を提供するということにとどまらない。資料だけではなく、図書館・社会全体が「誰もが使えるようになる」ことを目指している。いわば、図書館からインクルーシブな社会の実現を具体化しようとするものである。専門図書館では実際にどのようなことを考え、実施していくべきなのか。そのヒントを与えられれば幸いである。
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千葉県立図書館における読書バリアフリーの取り組み【p18-23】
宮﨑 佳代子(千葉県立中央図書館) |
令和元年6 月の「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」の制定により、障害の有無に関わらず誰もが文字・活字情報にアクセスできる社会の構築を目指す中で、再び図書館の果たす役割が期待されている。公共図書館では、障害者サービスとして活字による読書が困難な利用者や来館困難者に対して、閲覧の保障を行ってきた。しかし、この法律では従来のサービスに加えて、ICTを活用して誰もが情報へのアクセスの方法を選べる環境を整備することが求められている。本稿では、これまでの経緯を踏まえつつ、現在の千葉県立図書館の取り組みを紹介する。
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国立国会図書館の障害者図書館協力事業 -「みなサーチ」本稼働から1 周年を迎えて-【p24-29】
藤田 順(国立国会図書館 関西館図書館協力課) |
国立国会図書館の障害者図書館協力サービスを担当する関西館 図書館協力課 障害者図書館協力係の主な業務を紹介するとともに、2024年の本稼働スタートから1 年を迎えたみなサーチ(国立国会図書館障害者用資料検索)の概要とこれまでの利用状況について紹介します。 |
視覚障害者から見る読書バリアフリーの到達点と課題【p30-35】
立花 明彦(社会福祉法人日本点字図書館 館長) |
本稿は、一視覚障害者および点字図書館の立場から読書バリアフリー法を踏まえつつ、法律が制定してから現在までの視覚に障害のある人々を中心とする読書バリアフリーの実態を振り返りながら現時点での課題を整理している。IT社会において視覚に障害のある人々にとって電子データは有益であり、それが読書バリアフリーを推進していくカギになることから、その普及の実情を述べ、関連して行政や出版界の動向にも触れた。また図書館にとっての「読書バリアフリー」は、資料がそのままでは読めない障壁を取り除くだけではなく、図書館員の無理解な接遇等による心理的な障壁や利用を制限する規則にもあることを筆者の体験をも交えながら論じた。 |
読書バリアフリー=出版社・書店・図書館にとってのSDGs【p36-41】
成松 一郎(読書工房代表、専修大学講師) |
学生時代、点訳サークルを結成した筆者は日本点字図書館を訪問したことがきっかけとなり、出版社の編集業のかたわら、読書バリアフリーの分野にかかわり続けている。近年、出版社・書店の規模の二極化が進み、「ひとり出版社」や「シェア型書店」などが誕生したり、図書館も「マイクロライブラリー」「みんなのとしょかん(みんとしょ)」など、地域コミュニティと連携しながら、さまざまなテーマを掲げる小さな図書館が増加している。読書バリアフリーを考える際、「見えにくい・見えない」「読みにくい」「わかりにくい」という3 つのバリアについてイメージすることが重要である。出版社・書店・図書館のこれからのテーマは、「読書」という分野において、アーカイブを残していくとともに、誰でもアクセスできる環境を実現していくことが最大の目標である。 |
「歴史的図書館用品」の調査・収集・保存事業【p42-45】
原 桂樹(キハラ株式会社 資料保存事業推進室) |
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国立国会図書館関西館書庫棟見学&利用ガイダンス【p46-49】
金子 由里恵(専門図書館協議会関西地区連絡委員) |
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野球殿堂博物館に勤務して【p50-51】
永沼 里菜子(公益財団法人野球殿堂博物館) |
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北欧の美しい図書館【p52】
渡邊 由紀子(九州大学附属図書館/大学院統合新領域学府 ライブラリーサイエンス専攻) |
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図書館員が知りたい著作権80問【p53】
永井 昌史(日本化薬株式会社) |
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